おお振り
□キスの味【甘】
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一夜明けた朝、なんとなく浜田に会うのが気まずくて、俺は一日中避けるようにしていた。
浜田がいない間に早く帰ろうと鞄を持ち、ガラッと扉を開けると帰るの?という低い声。
泉「は…まだ…。」
浜田「俺のこと、避けてるでしょ。」
ばれてる。
腕をぐいっと掴まれて、俺は人気のない教室へと連れ込まれた。
浜田「どーして…」
泉「…何となく…だよ……。」
浜田「何だよ…なんとなくって…」
ズルズルと浜田はその場に座りこみ、頭をくしゃくしゃと掻いた。
泉「…ごめん。」
浜田「え……」
泉「なんかもう…わかんね…。俺、浜田のこと見ると心臓が壊れそうなくらいドキドキして…わかんなくなる。」
それだけ言うと俺は座り込んで、のど飴を取り出し舐め始めた。
胸がチクチクして痛いのは…のど飴で治るはずがないのに。
浜田「いずみ。」
泉「……何。」
浜田「俺も泉と同じ。」
泉「は?」
頭にハテナマークを浮かべて、俺は浜田を見上げた。
浜田「泉の事が好きだって言ってんの。中学の時から…ずっと…。」
泉「えっ…」
かぁぁっと顔が赤くなり、俺は顔を手で覆い隠した。
泉「でも…俺…男、だし……」
浜田「それでも俺は、泉の事が好きだよ。」
泉「…っ……」
浜田「ねー…泉、キスして良い?」
浜田の顔が俺の顔へとゆっくり近づく。
「目…つぶって。」と耳元で囁かれると、俺の体はびくっと反応して、反射的に目をつぶる。
そっと触れる唇。
生まれて初めてしたキスは…
甘酸っぱいレモンの味がした……。
fin.
→あとがき