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□夏と君と蝉の声【甘】*
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「あっちー‥」
今年の夏も暑い。
毎年毎年、こうも暑いと溶けてしまいそうになる。
西浦は私服校と言うこともあり、今日の俺はタンクトップに半ズボンと言うラフな格好で学校に居た。
下敷きをうちわ代わりにして、もう片方の手でぱたぱたと服を上下させる。
こんなの気休めにしかならないが、やらないよりかはマシだ。
「泉」
「んあ?なんだよ」
「‥あんまりこっちに風来ないようにして。さっきから汗かいてるから、風で髪が張り付く。」
「‥へいへい、わぁーったよ。」
暑い暑いと連呼する度、それに伴って気温が上昇して行く気がした。
いつしか俺は机に身体を預けて黙り込んでいたが、ミンミンと鳴く蝉の声がうるさく、寝ようとしてもなかなか寝付けなかった。
「あー‥寝れねぇー‥」
「‥‥‥」
今日の浜田は俺を一瞬足りとも見ずに、黙々と縫い物をし続けている。
いつもならウザいくらいに構って来るはずなのに‥なんだか調子が狂ってしまう。
「ちょっとジュース買いに行ってくる」
「‥なんで?」
「んなの暑いからに決まってんだろ。浜田は‥」
立ち上がろうとした瞬間、腕を強く引かれて俺は自分の椅子へと戻ってしまった。
暑くて死にそうだってのに‥コイツが居るせいでジュースを買いに行くことも許されないのか‥?
「何すんだよ!」
「‥ダメ、行っちゃダメ。」
「っ‥じゃあ‥お前が代わりに買ってこいよ!」
「‥わかった。」
ガタッと立ち上がると、俺の手を引いて浜田が机から離れる。
つまり、俺の手を繋いだまま教室を出て行ったのだ。
突然の行動にビックリした俺は浜田の手を振りほどこうとしたが、力が強すぎてその手を解くことが出来なかった。
なんだよ‥いきなりどうしたって言うんだよ‥!
「‥はまだ‥浜田っ‥!」
「何‥?」
「ちょ、ちょっと‥待てよ‥なんか‥怒ってんのか‥?」
「‥そう見えるんなら、そうなんじゃないの?」
何に対して怒っているのか、どうしてそうなっているのか、俺には訳が解らなかった。
浜田に何かした覚えも無いし‥どうしたんだろうと首を傾けることしか出来ない。
「なぁ‥浜田‥、自販機って‥あっちじゃ‥」
「‥こっち」
「いや、あの‥ここ‥トイレじゃん‥」
あまり使用者が居ない、この階の端のトイレ。
わざわざこんな所まで連れて来て‥浜田は一体何をしようと言うのだろうか?
「抱かせて」
「‥は‥え‥えぇっ!?」
「我慢出来ない、もう無理」
「ちょ‥場所、選べって‥こんなとこで‥っ‥ンッ‥!」