黒バス

□居場所【甘】
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君はキラキラと輝いている光。


僕はと言うと影。


その二つは、ほど遠くはなれた存在だ。




「黒子っちー!今日も一緒に帰るっスよね?」


「‥君と一緒に帰ったことなんて、一度もありませんが‥」


「え?いつも一緒に帰ってるじゃないっスかー」


「‥黄瀬君が勝手についてくるだけです。」




影の僕にとって、黄瀬君と言う存在はあまりにも眩しすぎた。


居るだけでオーラを放っている彼は、僕とあまりにもかけ離れている。


太陽の光が目に染みて眩むように、僕は彼にもそれと同じような現象を覚える。




「ツレないなー‥黒子っちは‥ま、そんなとこも良いんすけど。」


「‥‥‥」


「ねぇ、黒子っち」


「‥‥‥」




喋るのも苦手で口数の少ない僕に、いつも話しかけてくる。


そんな彼からの好意は、少なからずわかっているつもりだった。


‥でもその好意は、僕のこの気持ちとは一緒では無いもの。



君と僕では、あまりにも住む世界が違いすぎて。


光に与えられた希望や幸せは、影の僕が踏みにじって良いものではない。




「黒子っち、今日も寄り道っスか?」


「‥いつまで着いてくるんですか。」


「俺も方向こっちなんすよ。それに‥黒子っちと、もっと一緒に居たいんっス。」


「僕はお断りです」




ピシャっと言い放って距離を取ろうとしても、君は引き下がろうとはしない。


ここまで拒否しているのにも関わらず、犬のように尻尾を振って着いてくる。


‥一体君は、何がしたいんですか?




「俺、女の子には断られた事ないんスよ?」


「‥嫌味ですか」




その言葉に、チクリと胸が痛んだ。


黄瀬君はカッコイイし、女の子にもモテる。


言い寄って来る女の子はたくさん居るのだから、早く彼女でも作って僕から離れてほしい。



あまりにも傍に居ると‥僕はもっと欲しくなってしまう。




「そうじゃないっスよ!俺が言いたいのは‥」


「‥ちょ、っ‥黄瀬君‥ッ‥痛い、です‥」


「俺が好きなのは黒子っちッスよ!?俺が‥一番振り向いて欲しいのは‥っ‥、いくら鈍くても‥気付いてるっスよね‥?」


「っ‥!」




気付きたくなかった、と言う方が正しい。


君は僕にとって、あまりにも存在がキラキラしすぎている。



僕と君は釣り合わない。


光と影は交じり合ってはいけないんだ。




「嫌、です‥」


「‥黒子っち、」


「僕は‥黄瀬君とは、そんな関係にはなれません‥」




本当は‥嬉しいのに。


僕がここで君に想いを打ち明けたら、君の将来も全て崩してしまう。



‥君は僕を好きになんかなっちゃいけないんです。




「君と僕は、あまりにも住む世界が違います」


「なんで‥、好きならそんなの‥」


「君が光だとしたら僕は影です。僕にとって‥君の存在はあまりにも眩し過ぎます」


「‥‥っ‥」




だから黄瀬君、ダメなんです。


僕が君を好きだと言ったら、均衡が保てなくなる。




「ねぇ‥黒子っち。‥それ、口説き文句っスか?」


「‥え‥っ‥?‥ンッ‥!」




ほんの一瞬、隙を見せた瞬間に黄瀬君は僕にキスをした。


あまりにも突然の事で、時が止まったように思えるほどだった。



軽く、触れるだけのキス。


慣れてそうな事なのに、黄瀬君は顔を真っ赤にしながら唇を離した。




「なに、するんですか‥」




冷静を保って言葉を口にしたが、心臓なんてバクバクしている。


表情には出ないけど、内心は卒倒しそうな勢いだった。




「‥光があるところに、影が出来るんスよ?黒子っち。」


「え‥?」


「俺が光なら‥、黒子っちも‥居なきゃダメなんス。」




僕をそっと抱きしめたその身体は、とても大きなものなのに震えていた。


その背中に手を伸ばし、ぽんぽんと軽く叩く。



たったそれだけの事。



それだけの事なのに‥黄瀬君から震えが消えた。




「好き、ッス‥黒子っち‥」


「‥‥僕も、です‥」




そう答えを返すと、彼は顔を赤くしながらはにかんだ。



光のあるところに影が出来る。



そこが、僕の居場所。




fin.




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