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□真愛【シリアス甘】*
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好きで好きで堪らなかった。
毎日一緒に居られるだけで幸せだった。
何度も何度も想いを伝えようとした。
しかし、これは許されない恋。
男が男を好きになるなんて。
それは天地がひっくり返る程に有り得ないこと。
俺を受け入れてくれることはないって、言わなくても分かってる。
「おじゃましまーす!」
「お、どーした?泉、なんか機嫌良いじゃん。」
「うそ!?わかる?‥実はさ‥‥」
「‥‥え‥?」
泉はつい最近出来た彼女と今日キスしたんだと言う事を笑いながら話した。
その幸せそうで楽しそうな顔は、今までに見た事が無い。
俺の胸から沸き上がって来るもの‥それは、その事実を知らなかったと言う自分への怒りと泉の彼女への嫉妬心、それと憎悪だった。
「泉‥、彼女‥居たの‥?」
「いやー、そう言ってもつい最近出来たばかりだからさ。しばらくは他の奴らにも黙っておこうかと思って‥」
「‥やっぱり‥‥そうか‥、泉も‥女の子が‥‥」
ブツブツと呪文のように単語を唱えて繋ぎ合わせる。
嗚呼、憎い。
俺がこんなにも近くにいて、想って、守って、愛しているのに。
何故、気付いてくれないの?
「や‥やめっ‥!ッ‥何する気だ‥!!やめろ!やめて‥浜田ッ‥!」
ハッと我に返ると、俺は台所から持ち出した包丁を無意識のうちに泉へと向けていた。
床に叩き付けられた泉は恐怖で震えながら俺を見つめている。
その瞳に映るのは鬼のような形相をした自分の姿。
今の俺はこんな姿をしているんだと思うと、自分が自分では無くなっていく恐怖に身体が震えた。
「どうしたんだよっ‥浜田‥早く‥それ片付けろって‥!マジ‥シャレになんねーよ‥」
「なんで‥冗談だと思うの‥?なんで‥なんでだよ‥!」
「落ち着けよ!っ‥うわっ!」
俺は泉に場乗りになって包丁を振りかざす。
喉元をもう片方の手で締め付けると、泉の呼吸がひゅっと一瞬止まったような気がした。
カタカタと互いの身体が震えるのに気付き、その手を止める。
‥俺を受け入れて。
男の俺を‥受け入れて。
俺以上に泉を愛せる奴は、他には居ない。
「選んで、泉」
それは与えられた選択。
生か死か。
俺の首もかけられる。
「俺は泉の事が好きだ‥愛して愛して‥誰よりも泉のことが好きだ。だから‥」
「お、れは‥浜田のこと‥何も‥」
「っ‥黙れ!黙れ黙れ!!」
喉元に包丁を突き付けた。
もう後には引けない。
俺がこんなにも愛しているのに、泉の頭の中は俺の知らない奴の事ばかり。
狡い、狡い。
たかだか横から出てきた、メスと言う存在なだけの奴に。
俺だけの泉を返してよ。
「この包丁に命を捧げるか、俺のモノになるか‥十秒だけ待ってやる」
「っ‥なんだよ‥それ‥!」
「いち、に‥さん、し、ご‥」
それは天秤に掛けられた死へのカウントダウン。
泉の目は恐怖の色で埋めつくされていった。
じゅう、と声を出そうとしたその時、俺の声を泉が遮る。