□幸福な時間【甘】
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毎年迎える君の生まれた日。


今年はどう祝おうか。



いつもこの時期が近付くと、自分のことのように嬉しくなってしまう俺が居る。



二人きりで過ごすこの日がとても楽しみで、喜ぶ顔が見たくて。


ついつい張り切ってしまうんだ。




「泉‥最近はアイスケーキにハマってたよな‥自分で作れっかな‥?」




プレゼントはどんなものを送ろう?


部屋の飾り付けはどうしようか?



泉と過ごす日々は、胸を張って幸せだと言える。


大好きで、ずっと一緒に居たい。




「プレゼントは‥身に付けられるアクセサリーでも良いけど、やっぱり実用的なのが良いよな‥」




泉のことを考える事が出来る幸せ。


思わず顔が緩んだ。



ケーキの土台になるアイスクリームを作りながら、ああでもない、こうでもないと口にして。


悩んだあげく、俺は冬には欠かせないマフラーと手袋を贈ることにした。




「泉ー!」


「ん、浜田?‥早いな。まだ皆、来てないぜ?」


「今日、泉の誕生日だろ?だから、一番におめでとうって言いたくて‥!」


「‥え‥?」




悩みに悩んだプレゼントを見せて、にっこりと微笑む。



そんな俺を見て、突然泉が吹き出した。


喜んでいると言うよりは‥面白くて笑っていると言う表現の方が適切だと思う笑い方。




「い、いずみ‥?」


「え‥?誕生日って‥もしかして俺の‥?」


「う、うん。そうだけど‥」


「‥今日、何日かちゃんとカレンダー見てみろよ。‥28日だぜ?」


「えッ!?」




携帯を取り出してスケジュールを確認すると、確かにカレンダーは泉の誕生日の一日前を示している。


最近バイトで深夜に帰ることが多かったし‥そのせいで日付感覚がおかしくなっていたのだ。



呆然とする中にも羞恥心があって、俺はいたたまれない気持ちになってしまう。




「でっ‥出直してくる‥!」


「別に良いよ。今日貰っとく。‥開けてもいいか?」


「やっ‥ダメ!明日俺が一番におめでとうって言うの!」




俺の変なこだわりと言うか、なんと言うか。



そんなことを言っている間に、泉は誕生日プレゼントの封を切って中身を取り出してしまった。


温かそうなマフラーと手袋だな。と泉は笑い、その場で俺のプレゼントを身に付けてくれる。



その君が、あまりにも可愛く笑うもんだから。


俺は言葉を失ってしまったんだ。




「お前と二人きりになれるなんて‥久しぶりだな。すげー嬉しい。」


「で、でも‥誕生日間違えるなんて‥」


「ありがとな、浜田」




泉のその一言はまるで魔法のように、俺が気にしていることを拭い去ってくれた。



作ったケーキは、明日食べよう。


俺の家で目一杯お祝いしてやるんだ。




「‥今日、泊まりに行く。そしたら一番におめでとうって言えるよな?」


「え、あ‥うん。まぁ‥そうだけど‥」


「よし!決まりだな!」




そんなことで嬉しくなってしまう、単純な俺。


君の産まれた、奇跡のような記念日の時間を俺に。



君が幸せになれるように、一番にお祝いしてやるんだ。



『産まれて来てくれてありがとう』って。




fin.




→あとがき
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