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□苦悩の日々【ギャグ】
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「翔ちゃん、可愛いです〜♪」
「ねぇねぇ、翔!こっち向いて!」
「来栖、ケーキを焼いてきたのだが‥」
「やぁ、オチビちゃん。そんな可愛い格好でどこに行くんだい?」
「‥翔、そんな格好で出歩くなんて恥ずかしくないのですか?」
俺だって好きでこんな格好をしているわけじゃない。
仕方なく、仕方なくやっているだけなのに‥なんでこいつらに囲まれているんだ?
今日は撮影の仕事が学園内のスタジオであるからってこの服を着ているだけなのに‥。
「だぁーっ!うぜぇっ!散れっ!」
「わぁっ♪翔が怒ったー!」
「オチビちゃん、怒るのは美容に良くないよ?」
「うるせぇっ!俺はこれから撮影の仕事があるんだから邪魔すんなっ!」
「ああっ!ダメですよー、翔ちゃん。スカートの下にドロワーズ履くの忘れてますよ?」
「なんでお前はスカート捲ってんだよっ!」
女物のパンツまで履いているから、俺は本当に変態なんじゃないかと思う事がある。
でも仕事だから‥これは仕方のない事なんだ。
那月の手をぱんっと弾くと、俺はずかずかと廊下を歩いていく。
その後ろをぞろぞろと付きまとうやつらが目障りで仕方ない。
「来栖、ケーキはいらないのか?」
「あぁ、ありがとな‥それはあとで食うから‥」
「翔、そんな格好ははしたないですよ。せめて私の上着を‥」
「あぁ‥ありがとう‥」
まるでお付の人みたいに着いて来て、こいつらは暇なのかと首を傾げた。
確かに同じST☆RISHのメンバーではあるけど‥それぞれに違った仕事も入ってきたりする。
こんなことしている暇なんてないだろうに‥何をしているんだろう?
「お前ら‥暇なのか?」
「ううん、俺はサッカーしようと思ってたとこだよ?」
「私はこれからレコーディングが‥」
「俺はレディとの約束があってね」
なるほど。
それぞれ、違った予定や約束があるらしい。
「そんなにやる事あるのに‥なんで俺についてくるんだ?」
「翔が心配だからっ!」
「‥心配なんです」
「そうそう。危なっかしくて、心配だからね」
「そーですよっ!こんなにラブリーでキュートな翔ちゃんが‥」
「襲われでもしたら大変だろう?」
「なっ‥!?」
よりによってしょーもない理由でついてきやがって‥!
俺様は男だってのっ!
「男が誰かに襲われるわけねーだろ!?」
「本当に?」
一度に声を揃えてその言葉が返ってくる。
ガンッと壁に頭をぶつけたかと思ったら、目の前にはレンの顔。
その光景にビックリして目を見開いた。
「‥ほら、こんなに簡単に追い詰められちゃった。」
「レ、レン‥」
「翔ちゃんのスカートも‥ほら、こんなに簡単に捲れちゃいます。」
「那月っ‥ちょ、っ‥!」
「此処もガードが緩すぎるんじゃありませんか?」
「ぁ‥ト、キヤっ‥」
「こんなヒールじゃ逃げられもしないだろう」
「聖川‥これはだなっ‥!」
「すきありーっ!ちゅー!」
「ンッ‥!?お、音也ぁっ!!」
みんなみんな好き勝手に俺で遊びやがって‥!
涙目になりながら震えていると、やれやれと言いながら俺を解放する。
こんなに馬鹿にされてっ‥皆酷過ぎるだろ!?
「ほら、だから危険だって言っただろ?」
「普段の何倍も可愛い格好してるんですからっ‥!」
「貴方って人は‥もう少し危機感を持ちなさい」
「案ずるな。向かってくる輩は叩ききってやるからな」
「皆で翔を守らないとねっ!」
「っ‥!」
気持ちは嬉しい。皆が俺を心配してくれているところ。
それが過保護すぎて、精神的にも悩まされるくらいなところ。
だからって‥俺も男だぞ?
自分の身くらい守れるし、第一こいつらが居たら仕事にもなりやしない。
「っ‥いいかげんにしろーッ!」
俺の苦悩の日々はまだまだ終わらなさそうだ。
fin.
→あとがき