□夏の空は快晴【甘】
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「‥買い出し?」


「そそ!モモカンに頼まれちった!」


「荷物も重いから‥篠岡じゃ無理なのか‥なるほどね。」


「ね、一緒に行こう?」




ふわふわのオレンジの髪をなびかせて笑顔で言う君。


それは俺の、一緒に居ると温かくて落ち着く、大好きな人。



頼まれた買い出しのメモを持って、重いからもう一人連れて行きなさいというモモカンの指示から俺を選んだらしい。




「わかった。俺も行くよ」


「やったー!ありがと、栄口っ!」


「そんな‥喜び過ぎだよ、水谷」




そういえば最近は練習が忙しくて、こうして二人で並ぶ機会があんまり無かった気がする。


そんな事を意識したら、なんだか急に恥ずかしくなってきた。



これって‥なんか‥‥




「デートみたいだね!」


「へぇ‥って‥ええええっ!?」


「や、やだなーっ!じょ‥冗談だよ?栄口」




水谷も‥同じ事を考えていたの?

俺が思っていることをサラッと言ったもんだから、一瞬心を読まれたのかと思った。


ちらっと水谷を見てみると、自分で言ったくせに顔を赤くして俯いていて。


それが俺にもうつって、俺の顔も真っ赤になってしまう。



こんなんで幸せだなんて思ってしまう俺って‥本当に単純で馬鹿だ。




「えへへ‥嬉しいな‥」


「何が‥?」


「こうして栄口と二人っきりになれるの、久しぶり。‥ね?」


「うん‥そーだね‥」




水谷が笑顔で話しかけてくれんのに、俺は興味ないような喋り方をした。


これ以上笑顔になったら、きっと顔が緩んでニヤけてしまう。



本当は違うのに‥こんな素っ気なくするつもりじゃないのに。




「ね、栄口」


「‥なんだよ」


「‥‥ね、栄口!」


「だからなっ‥んっ‥!?」




振り向いたその瞬間、俺は時間が止まったような錯覚に陥った。


不意に水谷の顔が大きく映って、ばちっと目が合う。

引き寄せられるがままに近づけば、触れるのは互いの唇。


誰が見ているかも分からない公道でこんなことするなんて、と頭を回転させて引き離した時間、ここまでおよそ3秒だ。




「ば、ばかっ‥!なにすんだよ!」


「大丈夫、誰も見てないよ」


「‥にしても!こんなとこで‥き、キス‥なんて‥すんな、よ‥」


「だって‥栄口もしたくなかった‥?」




あ‥そうか。俺の顔に書いてあったんだ。

俺も‥水谷と同じ顔をしていた。


してやったりと言う顔で無邪気に笑う水谷の頭を軽く叩いて、俺達は買い出しの道に戻る。



夏の天気は今日も快晴。


でもこの熱は、暑さのせいだけじゃないような気がした。




fin.




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