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□恋人の不満【甘】*
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「本当ムカつく!泉もそう思うよね!?」
「あ、あぁ‥うん‥」
滅多に怒ることのない人が怒ると怖いって、誰かが言っていたような気がする。
自分も先程まで確かに浜田に怒りを覚えていたハズなのだが‥栄口の怒りの方が遥かに俺の怒りを超えていたので、若干引いてしまっている自分が居る。
「原因って‥それだけ‥?」
「それだけって何だよ!?俺は怒っているんだからな!」
「だって原因がショートケーキのいちご食われたからって‥」
「半分こにしようって言っていたのにも関わらずだよ!?」
うん。まぁ、価値観は人それぞれだもんな。
俺が怒っていた理由は確か‥浜田が女友達と一緒に映画に行った事だ。
多分栄口からすると、俺のその怒りはショートケーキのいちごと同じくらいなんだろう。
「もう絶対に許してやんない!」
「あぁ‥そう‥」
「泉だって浜田さんに怒っているんでしょ?なんでそんなに冷静なんだよ!」
「いや‥なんか栄口を見ていたら、どーでも良くなって来たと言うか‥」
「そんなんだから相手が調子に乗るんだよ!」
そう言うものなのだろうか。
取り合えずお互いにお互いの相手に不満があると言うこと。
これは確かな事実だろう。
「もう‥本当ムカつく‥」
「わかった、わかった。でも‥仲直りしたいんだろ?」
「‥水谷が謝ってくれなきゃヤダ」
ぷくっと頬を膨らませて俺にそれを見せる栄口に、俺は深い溜め息を漏らした。
本心は仲直りしたい。
多分、水谷も栄口もそう思っているはずだ。
「そんなにムカついてるなら‥俺と付き合う?」
「‥え‥?」
「俺も浜田にムカついてたとこだし、調度良いじゃん。それに俺チョコケーキ派だし」
「え‥えぇっ!?」
パニックになって慌てる栄口の顔。
これこそ正に、ショートケーキの上に乗っている苺みたいな顔だ。
栄口とは友達だけど、キスするくらいならいけると思う。
そう思って俺は栄口に顔を近付けた。
「ちょ、ちょっと待って‥泉‥!」
「キスするくらいなら、友達でも普通に出来んだろ?」
「いやいや!普通に出来ないって‥っ‥は、はなして‥」
「‥やだって言ったら?」
あ、俺ってSっ気あるのかも。
栄口の困っている顔を見て楽しんでるもん。
もっとその顔が見てみたい、だなんて思ってしまう。
「‥ね、水谷を妬かせてみれば良いじゃん」
「でも‥そんなの浮気になっちゃうじゃん‥」
「キスくらいなら大丈夫だよ、ほら。意外と相性良いかもよ?‥俺達」
もじもじと俺の目を見ては俯き、栄口は答えを渋っているようだった。
思い切り抵抗しない所を見ると‥あながち満更でもないように見える。
少し強引に迫っちゃえば、栄口は流されちゃう所があるからな。
「わ‥かった、よ‥っ‥」
目をつぶった栄口の唇に、俺は静かに口を付ける。
それは触れるだけの柔らかなキスで、俺はいつもとは違う柔らかい唇の感触に胸が高鳴った。
「やっぱり‥恥ず、かしい‥こう言うの‥」
「栄口の唇‥柔らかい」
「ちょっ‥待って‥泉‥んぅっ‥!」