□甘える猫の飼い方【甘】
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気まぐれな猫は、たまにとてつも無く寂しくなることがあるらしい。


俺はそれに気付いていないフリをしてやる。


気高い猫は、そんな自分の弱い所なんて見せたくないだろうから。




「‥なぁ、はまだ。」


「ん?どした?」




プライドの高い猫は、自分からそれ以上近付いて来ることが出来ないらしい。


下を向いて尻尾が垂れ下がっているのを見ると‥多分、そう言うことなんだろう。




「‥泉。ぎゅーしたいから、こっち来て?」


「ッ‥し、しょうがねーな‥まったく‥」




そんな事を口にしつつも、耳と尻尾をピンッと立てて喜ぶ猫。


柔らかいその身体は、強く抱きしめれば壊れてしまいそうで。


顔を埋めて温かい体温を感じ取り、額にキスを落とす。




「泉、好き」


「‥ほんと、おめーは俺が大好きだな‥迷惑だってのに‥」


「うん‥ごめん。‥でも、好き。」




泉の顔が緩んで真っ赤になってるってこと、自分では気付いてないのかな?


ああ、やっぱり可愛い人。



素直になれなくて、自分からは何も出来ない不器用な人。


だけどそんな所も全部含めて‥泉が好きなんだ。




「‥なぁ」


「ん?なーに?」




身長差もあるせいで、泉はいつも俺を見上げる形になる。


その上目遣いも愛おしい。



もっと見せて。


泉の作り出す色々な表情を、もっともっと見たいんだ。




「‥したかったら‥キス、しても‥いい‥ぞ‥」


「‥ん、ありがと」




本当は泉がしたいんでしょ?なんて事は言わないで、気付かないフリ。


実際のとこ、俺もキスしたかったし。



俺の飼っている猫は気まぐれで、いつもツンツンしている。


けど、たまに甘えたがりになる。


それをベタベタに甘やかすのが飼い主の仕事だ。




「‥ん、っ‥は、まだ‥はぁっ‥」


「ん、好きだよ‥いずみ‥んっ‥」


「‥おれ、も‥、す‥き‥」




小さな声だったけど、それは俺の耳にちゃんと届いた。


幸せを噛みしめながら、今日も俺は可愛い飼い猫と戯れる。



今日の君は、一体どんな表情をみせてくれるのかな?




fin.




→あとがき
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