□違いの想い【ギャグ甘】*
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「泉ー!大好きー!」


「な、なんだよ‥いきなり‥」


「ちょっ‥俺も!俺も!大好きー!」




俺が好きな想い人。

それはこの黒い髪がよく似合っている泉だ。


そこらにいる女の子より可愛くて美人で、たまに男だということを忘れるほど。


俺だけがその可愛さを知っていればいいのに‥最近、俺にはライバルがいるということを知った。




「‥なんで浜田さんがいるんですか。」


「だって俺、泉と一緒に帰る約束しているんだもん」


「っ‥泉!俺と一緒に帰ろうよ!そいでコンビニ寄ろうよ!」


「水谷!泉はこれから俺の家に来るんだよ!」


「あーっ!そうやって俺を退け者にするんだ!俺も行く!」




浜田さんは俺が泉のことを好きだって、きっと気づいている。


そして浜田さんも‥泉のことが好きなんだと思う。


じゃなきゃこんなに執着しないし、一緒に帰ったり毎日一緒にいることもないだろう。




「泉は俺の家に泊まるから無理なの!3人も来るのは部屋狭いからダメ!」


「この前その家で先輩たちと打ち上げしてたじゃん!絶対行く!」


「だーかーら!少しは空気読めっての!」


「いくいくいくー!ぜぇーったい行くー!」


「だぁあああ!うるせぇえええ!!」




俺達の口論を上回る大きな声で止めたのは、他でも無い泉だった。


着替えたロッカーの扉をバンッと殴るように閉めて、二人を睨みつける。


その視線に身体が跳ね、俺たちは大人しくなった。


惚れた弱みというやつか。

お互いに泉には逆らえないのだ。




「うっせーよ。今何時だと思ってんだ。」


「9時‥くらい?」


「そう言うことじゃねーんだよ、近所迷惑だから止めろって言ってんだ。」


「っ‥で、でも‥泉‥」


「そんなに来たいなら来させればいいだろ。別に泊まらせるわけじゃねーし。」




さらっと言いのける泉の言葉に、浜田さんが撃沈した。


よっぽど二人きりになれることを楽しみにしていたんだろうな‥。



でも俺としては、浜田さんと泉を二人きりにするわけにはいかないのだ。


なんだかよくわからない使命感というか‥好きな人が狙われているってのに、その獣が居る檻にそれを放して見ていられるほど、俺は馬鹿じゃない。




「本当にそれでいいの‥?泉‥」


「あ?別にいいんじゃね‥水谷もそうしたいんだろ?」


「う、うん‥俺はそれでいい」


「じゃー決まり。早く行こうぜ」




俺は自転車をこぎながら二人に続いた。

いつもこうして二人で帰るのかな、なんて思いながら。


幼馴染なんて勝ち目がないことは分かっている。


でもそれでも‥可能性はないわけじゃないよね?
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