その他

□追試課題【甘】*
1ページ/7ページ

「ちくしょお‥あのホクロメガネ‥こんなに追試課題出しやがってぇ‥」




俺は今、現在進行形で、学校のテストの追試を受けさせられている状態だった。


確かに自分が悪いんだろうけど‥かといって、授業中寝ていて右も左も分からない奴に、この膨大な量の課題はどう考えてもおかしいだろ?


羅列されている問題が解るわけもなくて、俺は頭を抱えて悩み込む。



ふと脳裏に過ぎるのは、雪男が夜な夜な熱心に俺に勉強を教えてくれたこと。


細い糸を手繰り寄せるように雪男の言葉を思い出しながら、俺はその問題に取り組んだ。




「兄さん、調子はどう?」




何時間経った事だろう。

仕事を終わらせた雪男が様子を見に教室に戻ってきた。


顔を上げてみると、さっきから3時間は時間が経過している。


俺がこんなに集中するなんて‥本当に珍しいことだ。




「あ‥あぁ!見ろよ!結構出来たんだぜ!」


「どれ?見せてみて‥‥へぇ‥」




流すようにして俺の回答を見る雪男。

その視線が俺の書いた字を追っている。


先生にその場で採点されると言う作業は昔からもの凄く緊張して、背筋がピンと張ってしまう。

それに連動するかのように、俺の尻尾もピンと先まで伸びていた。




「意外と出来てる‥ビックリだ‥」


「ま、マジでか!?」


「うん。凄いよ兄さん!やれば出来るんだね。」




その言葉がバカにされているなんて事には気付かず、素直に嬉しくなって目の前がぱぁっと明るくなる。


パタパタと尻尾を左右に振り、俺は褒められた喜びを隠さずには居られなかった。




「じゃあ終わりだよな!早く帰ろうぜ!」


「ちょっと待って、兄さん。今日の兄さんは凄く良く頑張ったから‥先生の僕から、ご褒美をあげるよ。」


「ご褒美!?なんだそれ?欲しい欲しい!」




着いてきてと言われ、鼻歌を歌いながら俺は雪男の後に続く。

雪男に褒められて、それにご褒美も貰えるなんて。


追試もたまには良いもんなんじゃないかと、廊下を歩きながら思った。



雪男に言われて付いていった先は、俺たちがいつも授業で使っている教室だった。




「せーんせっ!なにくれんの?」




こういうときだけ、ふざけて先生と呼んでみたりする。


ご褒美が貰えるんだから、今くらいなら許されてもいいはずだ。


雪男が机から取り出したのは、甘そうなピンク色の包装紙に包まれたチョコレートだった。




「疲れた時には甘いものが良いんだって‥兄さん、疲れてるでしょ?」


「おうおう!たまには気が利くじゃねーか!頭使いすぎて、もうヘロヘロ〜って感じ?」




そう言って雪男が差し出したチョコレートを一口で食べて飲み込む。


甘く蕩けるような食感は、俺の身体全てを痺れさせるようだった。



ん‥痺れさせる‥?




「ゆ‥きお‥」


「‥何?兄さん」


「な‥ん、か‥‥眠‥ぃ‥」




俺の意識はそこで途切れた。


深い眠りへと落ちて行き、追試の疲れが一気に来て倒れたのか‥と思った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ