その他
□毎朝のお弁当【甘】
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バカな子ほど可愛いとは良く言ったものだ。
確かにその通り。
どこの誰が言い始めたのかは知らないけど、その人とは気が合いそうだ。
僕の兄さんは‥世界一可愛いと思う。
「おーい、雪男ー起きたか?」
「あぁ、兄さん。おはよう」
慣れた手つきでネクタイを結び、僕はブレザーを羽織った。
兄さんはいつもその行動をまじまじと見ていて、そんな視線にどう対処したらいいのかと、毎朝悩まされる。
好きにさせておけばいいのかな‥?
とりあえずは、気付かないふりをしているが。
「やっぱり雪男は器用だなー‥俺、ネクタイ結べないし。」
「それで見てたの?‥ほら、兄さんも早くしないと学校遅れるよ」
「あーうん‥雪男、ネクタイやって?」
「全く‥そろそろ自分で覚えてよ」
ネクタイを絶対につけなきゃいけないと言う決まりは無いので、兄さんは普段からネクタイを付けたがらない。
だが最近は、異様にネクタイを付けたがる。
結局は苦しいと言って学校でネクタイを外しているのだが・・まぁ、少しでも慣れるように、こうして毎朝結んでやるだけでも違うのかも知れない。
「だって難しいんだもん」
「だもんじゃないよ。全く‥ほら、出来たよ」
「お、さんきゅ!でもネクタイ結べなくたって、雪男が毎日やってくれるだろ?なら、覚える必要ねーじゃん」
笑顔でさらっと爆弾発言をする兄さんに、不覚にもドキッとしてしまう自分がいた。
あまり深い意味は無いんだろうけど‥そういう意味に捉えてしまう。
無自覚って、本当に恐ろしいものだ。
「本当‥兄さんってバカだよね‥」
「なっ、バカってなんだよ」
「可愛いって意味だよ。その無自覚さも、いい加減どうにかしてほしいよ。」
可愛い、という女の子に向けて使われるような単語に、兄さんの耳が赤色に染まった。
あ、照れてるんだ。
そんなところも凄く可愛い。
このままキスしたら、顔まで真っ赤になっちゃうんだろうな。
「じゃあ僕、日直だから先に行ってるよ」
「‥え、あっ‥雪男!ちょっと待って‥」
「‥ん?どうかした?兄さ‥」
振り返った瞬間胸板に押し付けられたのは、ヒヨコ柄の布に包まれた可愛らしいもの。
兄さんを見ると少し視線をそらして、うつむいたりして。
なんだかそれが、照れているような感じにも見える。