おお振り
□キスの味【甘】
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生まれて初めてしたキスは…レモンの味がした―――…。
『キスの味』
浜田「いずみーっ!」
泉「……何。」
浜田「今日一緒に帰ろうぜ!」
泉「…いいけど。」
浜田はいつも帰るときに俺を誘ってくれる。
部活があるときも、先に帰って良いって言っているのに、待っててくれる。
そんなことを毎日されてると、自惚れてしまう自分がいる。
中学生の頃、野球をしているイキイキした浜田の事が好きになって、浜田も俺のこと好きになってくれれば良いのにな…って思う。
でも俺は男で、浜田も男。男が男に好かれて嬉しいはずがない…。
だからこの気持ちは閉まっておく。
ずっと…気付かれないように。
今のままで十分幸せなんだ。
どうかこのままの関係が…ずっと続きますように……。
浜田「じゃあここで、また明日な。」
泉「おぅ。じゃあな。」
浜田「あ、そだ!」
ゴソゴソと鞄の中を探り取り出したもの…それは……
泉「のど…飴?」
浜田「ほい。これ泉にやる。」
泉「えっ…」
浜田「なんか、いつもと泉の声が違うから…早く治せよ?」
朝から少し喉の調子が変だっただけなのに…なんで浜田には分かってしまったんだろう。
他の奴なんか全然気付いてなかった。
本当、こいつは鋭すぎる。
泉「……さんきゅ。」
浜田「おぅ…って、何か顔赤くね?」
大丈夫か?と言うと、浜田の顔が近づく。
額がコツッとぶつかり合ったとき、心臓がドクンと跳ねた。
泉「だっ…大丈夫…!じゃあな!!」
浜田「あっ!泉っ!!」
赤くなる顔を隠すのに必死で、俺は逃げるように走り去った。
ヤバイ…どうしよう…。
この気持ちは閉まっておくはずなのに…納まらない。
体中から好きという気持ちが溢れてくる。
泉「ぜってぇ…おかしいって…」
自分の部屋で、まだドキドキとしている心臓を押さえつけ、俺は枕に顔を埋めた。
さっき貰ったのど飴の銀紙を剥がすと、透き通ったツヤツヤしている黄色い飴が顔を出す。
泉「あいつの髪と…同じ色だ……」
綺麗だな。と思いながらそれを口に入れる。
それはすぅっと喉に染み込み、すぐに良くなる気がした。
同時に…甘酸っぱいレモンの味がした。