おお振り

□好きと言う自覚【シリアス】
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別に好きなわけじゃないけど……見ちゃうんだよな。

なんか視界に入るから。




ねぇ、それってさ……









『好きと言う自覚』









アイツと俺は幼じみ。


中学のときは先輩と後輩関係。


でも今アイツは…俺と同じ学年にいる。




浜田「いずみ〜」


泉「…なんだよ。」


浜田「勉強教えて?」




そう、同じ学年にいるのはこの馬鹿な浜田。


ただの幼じみのハズなんだけど…なんか最近…。




泉「やだよ。教科書見ろ。教科書。」


浜田「えぇ〜〜っ!」


女子「浜田く〜ん!勉強…私で良ければ教えてあげるよ?」




えっ?マジで?と言いながら、浜田は声を掛けられた女子の元へ走って行った。


…なんかそれがムカつく。



誰とでも仲が良くて明るくて。


俺なんかとは全然違う。



最近の俺は、浜田が誰かと一緒に、楽しそうに話しているだけで心がモヤモヤする。



一体…どうしちまったんだろう。




浜田「な〜泉、購買行かね?」


泉「一人で行け。」


浜田「冷たっ!メロンパン買ってやるからさぁ…」


泉「………行く。」




仕方ないから俺は浜田に着いていってやることにした。


買ってもらったメロンパンを口に入れたときに、美味しくて緩む顔。



浜田はそれをじーっと見ていた。




泉「なんだよ。じっと見たりして。」


浜田「…可愛いなーって思ったんだよ。」


泉「……はぁ?」




普通、男にそんなこと言うか?いや、言わない。


浜田の見せた笑顔は、愛しい人を見るような笑顔で、俺は胸の奥がチクンと痛んだ。



浜田は…俺と、俺の知らない愛しい人を重ねていたのかな?


メロンパンを食べる俺の口は止まった。




浜田「えっ…えぇっ!?泉…どうしたの?」


泉「……何が…?」


浜田「…泣いてるよ?」




頬に手を当てて、自分が泣いていることを初めて知った。


…泣いたのは何年ぶりだろう。


どうして俺は泣いているんだろう。




浜田「どっか痛いの?」




…痛い。心が…痛い。


俺はポタポタと涙を流し、涙がおさまったのは昼休みが終わる頃だった。




いつもいつも視界に入ってくるアイツ。


好きな訳ない。相手は男なんだから。



ある日俺は、思い切って言った。


浜田の事とバレないように、聞いてみた。




そうすれば…何かわかるような気がしたんだ。




泉「その人の事…別に好きなわけじゃないけど、見ちゃうんだよな。」


浜田「えっ…?」


泉「なんか視界に入るから…さ。」


浜田「ねぇ、それってさ……」




“その子が好きってことなんじゃないの?”


浜田のその言葉に、俺の頭の中がフラッシュバックする。



浜田と居た時間全てが幸せで、浜田が他の奴と話すとモヤモヤして。


俺は…男を……浜田を好きになってしまったんだ…と言うことに気付いてしまった。




浜田「誰なの?その子。」


泉「……言えない。」


浜田「なんでだよ。」


泉「お前に言ったら…全てが壊れる気がするんだ……」




つぅっと俺は涙を流した。


叶わない恋に気付いてしまった。



もしかしたら、気付かないようにしていたのかもしれない。




浜田「……泉…?」


泉「好きなんだ…そいつが……」


浜田「そっか…」


泉「好き…好きなんだ……」


浜田「うん…」




浜田の腕の中で俺は泣いた。


好きと綴った言葉は浜田に届くことなく消える。



嗚呼、神様。


この気持ちは何処にぶつけるべきなのでしょうか?



友達関係をこれからも築いていくのか、それとも自ら壊すのか。


それは自分次第。



苦しい…苦しいよ。


こんな気持ち…気付かせないで欲しかった。




泉「苦しいよ…浜田…」




俺を苦しみから開放できるのは…きっと浜田だけ。




fin.




→あとがき
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