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□ぐるふわ【甘】*
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ぐるぐる、ふわふわ。
そんな感覚が俺を支配している。
いつもの俺なら感じないその感覚は、自ら望んだものだった。
冷蔵庫に入れておいた、アルコール度数8%の缶チューハイ。
いつも飲む酒の半分以上もあるそのアルコール度数は、俺の思考回路を麻痺させていった。
「しん‥ちゃ‥」
真ちゃんは今お風呂に入っていて、俺はというとひとりぼっち。
最近マンネリ化してきたこの状況を打破するため、俺は酒の力を借りたのだ。
だって真ちゃん‥いつも俺が誘わないとえっちしてくれないし。
俺に欲情してくれたことだってない。
真ちゃんが淡泊すぎるのがいけないんだ。真ちゃんのバカ、バカ。
俺が今どんな気持ちなのかなんて‥真ちゃんに届くはずも無かった。
「高尾、シャンプーが切れたのだよ」
「‥んー‥、真ちゃ‥?もう、あがったの‥?」
「違うのだよ。いつもの場所にシャンプーが無いから‥ついでに、お前に詰め替えて貰おうと思ってな。」
「‥ぅ‥んー‥‥?」
シャンプー‥どこ置いてたっけ?
いつもの場所に無いとなると‥多分、洗剤と一緒に違う方の棚にしまったんだと思う。
女王様の命令が始まったと身体を起こし、地に足を着くが‥上手く立てない。
ふらふらして、俺はそのまま足を滑らせてしまう。
「っ‥高尾ッ!」
真ちゃんの声が聞こえた。
そう思ったときには、俺はもう真ちゃんに抱きとめられていて。
あったかいなぁ‥なんて思いながら、揺れる視界の中で真ちゃんを見つめた。
「‥あ、れ‥‥いたく‥ない‥?」
「当たり前なのだよ。俺が受け止めたのだから‥」
「真、ちゃん‥」
「お前‥具合でも悪いのか?」
心配そうな真ちゃんの顔。
ううん、寧ろ今は気持ち良いくらいなんだけど。
ぼーっとした頭で真ちゃんを見ていると、ふとテーブルに置いてある缶チューハイを見て真ちゃんが険しい顔をする。
「お前‥これ、飲んだのか?」
「‥‥ん‥」
「‥酒だって、解っていて飲んだのか?」
「うん‥」
素直に頷くと、真ちゃんは呆れた顔で俺を抱え上げた。
どこに行くのかと思えば、俺はベッドの上に寝かされ‥そのまま布団をかけられてしまった。
「真‥ちゃ‥?」
「寝て居ろ。飲んでしまったものは仕方ないからな。」
「やだっ‥‥ね‥、真ちゃん‥、おれ‥、真ちゃんとえっ‥」
俺、真ちゃんとえっちがしたい。
そんな事を言うはずだった口を、真ちゃんが人差し指を立てて塞いだ。
なんで?どうして寝ていろなんて言うんだよ。
俺が何の為に酒を飲んだのか‥わからないじゃんか。
「それ以上言ったら怒るのだよ」
「だ‥だって‥」
「あんまり俺を煽るんじゃない。酔った相手にそんなこと‥出来るわけないだろう」
‥わかんないよ、真ちゃん。
俺‥真ちゃんを煽っているのに。
誘っているのに‥なんで答えてくれないんだよ。