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□無自覚症状【甘】
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最近、視線が気になる。
と言うのも、あいつの目付きが悪いせいなのかもしれない。
俺はセッターだから周りの事には割と気が付く方で、だからこれは間違いとかじゃないと思うんだけど‥。
でもどうして影山がそんなに俺に視線を投げつけてくるのかも分からない。
知らずの間に何かしてしまったのか‥?
それとも、同じセッターとして俺の行動を見てるだけとか‥?
どちらにせよ、俺が集中出来なくなっていくのは目に見えていた。
「な、なぁ‥影山!」
「‥はい?」
「俺‥なんかしたか‥?」
「‥‥いえ?」
いつも通り頭にハテナマークを浮かべて、無自覚と言った様子の影山。
俺の思い過ごしか?なんて思ったけど、やっぱり見てるのだ。
着替えているときなんて視線が痛いくらいだし、帰り道でも後ろからヒョコヒョコと後を着いてくる。
一体俺に何をして欲しいのか。
影山の考えている事がさっぱりわからなかった。
「あ、あの!菅原さん!」
「ひょぇっ!?」
いきなり後ろに居た影山に声をかけられ、俺はビックリして思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
なんなんだよとバクバクする心臓を抑え付けるけど、思うように口が回らない 。
俺はすっかり影山のペースに飲まれていた。
「俺‥菅原さんといるときだけ心臓が痛いんですけど‥これは何かの病気ですか‥?」
「‥‥はぁ‥?」
同じように自分の心臓を抑え付け、俺にそう告げる影山。
‥え、何これ?
俺‥なんか告白されてんの?
‥いやいや。相手は男だし、どう考えてもおかしいだろ。
「そ、それって‥ドキドキとか、じゃなくて‥?」
「動悸に近いかもしれません‥なんか、息も切れるし‥身体も熱いんです。やっぱり病気ですか‥?」
「そんなこと‥聞かれても‥」
おかしいよ。
だって影山は男で、俺も男で。
それなのに、俺は影山が気になっちゃってて。
影山も‥なんか知らないけど、それっぽいこと言っちゃってるし。
でも、影山は恋なんて自覚していなさそうだ。
どこまでもストイックで‥そして、恥ずかしい奴だ。
「俺も‥‥一緒、かな‥」
「‥っ!じゃあ、病気じゃないんですね!?‥‥良かった‥」
影山は俺に恋をしているんだろうか?
それがもし、恋だとしたら‥
俺と同じように、影山もドキドキしているとしたら‥‥
それは恋だって教えてやりたいけど、そんなこと言えやしない。
自惚れているだけだって、自意識過剰だって、そんな風になってしまいそうだ。
「影山‥それはさ、病気じゃなくて‥」
「え‥?」
「‥俺も、多分一緒で‥さ、影山と居ると心臓が痛くなるんだ」
「エッ!?」
俺のその言葉に、顔を青くしてぷるぷると震える影山。
あ、多分コイツ、今確実に変な方向に捉えた気がする。
俺が影山を好きな方じゃなくて、嫌いな方とかに。
‥本当、単細胞だと思う。
思い込んだらそっちの方向でしか物事を見れなくなるんだから。
「‥菅原さんに‥嫌われた‥。菅原さんに嫌われたら‥もう‥練習付き合って貰えなっ‥」
「だーっ!違うっての!影山のにぶちんっ!」
「ぇ‥‥え‥?」
「‥ちゃんと気付てから‥俺に言えよな‥」
「気付くって‥?何を‥?ですか‥?」
さっきから頭にハテナマークばっかり浮かべやがって。
泣きはしないけど、泣き出してしまいそうなそんな顔。
気付くまで教えてやらない。
そうじゃなきゃ、コイツは俺から告白した所で気付かないだろうから。
「‥ヒミツ。影山が気付いたらそんときに教えてやる。」
「気になります‥」
「だーかーらっ!自分で考えろっての!」
「‥‥ういっす」
同じセッターだってのに、影山と来たら自分の気持ちや人間関係には疎い。
これもセッターに必要なことだと言うと、影山は元気な声で返事を返した。
影山にはもう少しの時間が必要だ。
そう、もう少しだけの時間‥‥
影山がそれを恋だと自覚する時間が。
それを自覚したとき、俺も伝えよう。
自分も同じ気持ちだと。
影山が好きだって。
それを影山が自覚するのは‥そう遠くはないお話し。
fin.
→あとがき