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□迷子の猫【甘】
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好きで迷子になっているわけじゃないけど、気が付いたら気まぐれな猫のように皆とはぐれてしまう。
携帯電話を持っているのにも関わらず、その時に限って本来の使い方を試したことがない。
本当、なんの為に携帯電話を携帯しているのかもわかりゃしない。
「あ‥また、はぐれちゃった‥」
いいや、ゲームでもして暇を潰していよう。
ここで電話をかければそりゃすぐに皆が見つかるんだろうけど。
でも‥俺にはそんなの必要ない。
「クロ‥まだかな」
暇つぶしのゲームをして、いつものように飼い主を待つ。
俺が迷子になると、必ずクロが迎えに来てくれる。
それは決まって同じだった。
「何してんの〜」
「エ‶ッ」
クロが来たと思ったのにクロじゃなくて、咄嗟に変な声が出た。
オレンジ色の髪に、半袖短パンと言ったラフな格好をした俺と同じ年代くらいの少年。
人見知りで目立つことが嫌いな俺は、俺の性格とは真反対に気軽に話しかけてくる少年と自分の間に壁を作っていた。
「えーっと、あー‥‥迷子‥?」
「えっ、他所から来たの?」
「うん」
さっさと会話を切り、自分のやっているゲームに視線を戻す。
苦手だ、人と話すのは。
早くクロが迎えに来てくれないかな。
少年との間に沈黙が流れる。
このまま立ち去ってくれればいいのに‥なんで立っているままなんだろう。
「それ、面白い?」
「えっ」
また話しかけてきた。
今度は俺の方を向いてしゃがんで、顔を覗き込まれて。
これじゃあ無視することも出来ない。
「うーん‥別に‥コレは‥‥ただの暇潰しだし‥」
「ふーん‥」
「うん‥」
そう、クロが来るまでのただの暇潰し。
俺が話すのが苦手なせいで、また会話が終わってしまった。
‥早くどっかに行ってくれないかな。
緊張して上手く話せないし、自分だって気まずくて困るだろうに。
「‥っ!!バレーやんの!?」
「エ‶ッ」
その少年はいきなり目をキラキラさせて立ち上がった。
さっきまでとは打って変わったその態度にびっくりして、また変な声がでた。
どうして俺がバレーをやっているなんて気が付いたのか。
いかにも鈍そうな感じのタイプなのに‥。
「そのシューズ!バレーの!?」
「あ‥うん‥」
なるほど、そういうことか。
こんなことになるなら、ちゃんとバックのファスナーを閉めておくんだった。
いつもは気にしない、ズボラで面倒臭がりな性格が裏目に出てしまった。
「おれもバレー部!おれ、日向翔陽!」
「‥‥‥」
バレー部‥なのか。
見た感じ、バレーをやるような身長でもないからビックリした。
俺もそんなに変わらないかもしれないけど‥。
‥あ、そんなことより名前。
名乗って来たのに‥こっちが名乗らなかったら失礼だし‥目を付けられても困る。
「‥‥‥‥孤爪‥」
「?こずめ?名前??」
「孤爪‥研磨‥」
おそるおそる自分の名前を口にした。
あ、自分の名前を口にして名前覚えられても‥目を付けられるって事なんじゃないのかな。
ちょっと失敗したかもしれない。
でも‥酷い事をしたりするような人には見えない。