■□ ショウセツ □■
□『引力』
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『引力』
彼との出会いは、いつだったろう――。
いや、正確に言えば、出会いではなく再会だ……。
彼と自分は、いわゆる幼なじみというもので、幼稚園、小、中学校と同じだった。
家も近かったから、一緒によく遊んだものだ。
彼はガキ大将のような存在で、周りにいる子たちはよく泣かされていた。
自分もその例外ではなかった。
今思えば可愛いものだけど、当時の彼は見事なオレ様っぷりで、ひとり、またひとりと彼の友達は減っていった。
自業自得、とはこの事だけど。
最後には、彼と自分だけになってしまった。
周りの子が離れていったのに、何故か自分は彼から離れなかった。
彼を哀れんで、という訳ではない。
むしろ、彼に潜む何かに惹かれていた。
(彼には抗えない……)
そう、何か引力のようなものを感じていた……。