■桜蘭高校ホスト部■

□渦
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昨日、ホスト部の営業を終えた後、いつものように鏡夜は帳簿整理のため一人で部室に残っていた。

「…今日はここまでにするか」

気付けば外はもう日が暮れていた。まもなく鳳家の車が迎えに来るだろう。鏡夜は仕事を切り上げて部屋を出た。その時、ドアに挟まれていた封筒を見つけたのだった。

「営業中はこんなものはなかったはずだが…?」

開封して鏡夜は眉をひそめる。
ハルヒと環が、ハルヒの父・蘭花の勤めるバーに入っていく写真だった。

「隠し撮りか…悪趣味だな」

うんざりしながら呟く。厄介なことになりそうだ。
鏡夜は数枚の写真を順に眺めていたが、その中の一枚を手にした途端、ハッと息を呑んだ。

そこに映っているのは、いかがわしいホテルのネオンが並ぶ路地で、2人が顔を見合わせながら談笑する様子だった。
環に寄り添うようにして、ハルヒの手は腕に軽く添えられている。

これは…。

2人のごく親密な関係を隠し撮りしたようにしか見えない。

…チクッ

一瞬、鏡夜の胸に痛みが走る。
焦りにも似たどろりとした感情が胸を覆う。
写真の中の2人の手が触れあっている部分から視線が離せない。

…夜、こんな場所で男女が2人。この写真の意味することは…。
環の嬉しそうな表情に動揺を覚える。じわり、と写真を持つ手に汗を感じた。胸騒ぎが収まらない。

写真を手にしたまま、鏡夜は困惑を隠しきれない。柄にもなく混乱する頭を懸命に落ち着かせると、鏡夜はやっと行動に移った。
手始めに、スキャンダルを避けるためにプライベートポリスを使って学校内をくまなく捜索させた。しかし意外にも写真がばらまかれた形跡はまだなかった。

鏡夜はほっと胸をなでおろす。

有難いことに、この写真の送り主はスキャンダルを公表する以外の目的があるらしい。ネガでも買い取らせようという事か…?

それに鏡夜にはもうひとつ気になることがあった。

封筒の宛名には、『鳳 鏡夜様へ』と書かれていたのだ。もちろん直筆ではなく印刷された文字で。

(…これを、なぜ俺に?)


とにかく対策を考えなくてはならない。
まずは写真の真偽を確かめるために、今日この勉強室にハルヒを呼び出したのだった。



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