■桜蘭高校ホスト部■

□軽井沢で待っていて
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ねえ先輩、と呼びかけられて、鏡夜はぼんやりと物思いにふけっていた自分に気づく。
ハルヒはそんな鏡夜の困惑には気づいていないようで、ベンチに背を預けたまま話を続けていた。

「別荘があるなら、みんなそっちに泊まればいいのに」

「いい社会勉強じゃないか?バイトもそうだが、庶民の小さなペンションに一般客と一緒に泊まるなんて、めったに経験できることではないし」

「うわあ…金持ち発言」

「ん?何か言ったか?」


本心を見せない威圧感を隠したまま、爽やかににっこりと微笑む鏡夜の隣で、ハルヒはもごもごと口を濁す。
ある意味、鏡夜先輩が一番サワヤカかもしれない…などと思いながら。

「鏡夜先輩は、「さわやか選手権」には参加しないんですか?」

けっこういい勝負になりそうなのに、とクスクス笑うハルヒに、

「ああ。別に勝利したところでこんなペンションに一人で泊まっても仕方ないからな」

と、気もなく答えて鏡夜はふたたび文庫本に目を落とす。


「やだなぁ、一人じゃないですよ」

その言葉に、鏡夜は顔を上げてハルヒを見た。
隣に座る小柄なハルヒは、その大きな瞳で鏡夜を見上げて言った。


「自分と2人ですよ?鏡夜先輩」

「…っ!」


鏡夜はその言葉に息を呑んだ。
カッと顔が火照るのを感じる。


そのセリフはまるで、2人で泊まることを期待しているように思えて。


…いや、コイツは意味があって言ったわけではない。
確かに、選ばれた部員1人には客室を与えられ、当然、従業員のハルヒもペンションに宿泊する。

事実を言ったまでのことだ。

この天然娘の言葉に、べつに深い意味などないのだ。


そう、わかってはいるが。
しかし、上目づかいで見つめられながら言われたその言葉に、鏡夜は動揺を隠せなかった。

じわり、と首筋が汗ばむ。


「…確かに、それはそうだが」

なんとか平静を装って返事をする。



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