■桜蘭高校ホスト部■
□軽井沢で待っていて
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ハルヒが入部してから、環はハルヒを中心に行動するようになった。
まあ、本人にその自覚があるかどうかは別の話だが。
環は、今年の夏休みにはハルヒを誘ってどこかへ行く計画を立てようとしていたのだろう。
他の部員たちもそうだ。
それぞれ、ハルヒを旅行に誘っていたようだ。
ついこの前まで2人だけの世界で生きていたあの双子たちでさえ。
そういう鏡夜も、鳳グループ所有の国内リゾートをハルヒに勧めていた。
「今ならオーシャンビューの部屋を用意できるが、特別に格安にしておいてやるぞ」
「またそう言って、プールの時みたいに実験するんじゃないでしょうね」
「…人の好意を疑うのか?まあ、協力してくださるお客様には、それに見合っただけのサービスをしてもいいが」
「やっぱり…」
あいかわらずの営業口調ではあったが、もしハルヒが行くと言ったら、鏡夜もその期間はリゾートへ滞在するつもりだった。
鏡夜の連れということにすれば、施設を無料で案内してやれるからだ。
だが、べつにハルヒに便宜を図ってやろうと思ったわけではない。
この夏のうちに新規施設の下見をしておこうと思っていたので、ちょうどいい機会だったのだ。
庶民の利用者の感想が聞ければ、今後の経営の参考になるだろうと思っただけだ。
他意はない。
別にハルヒを誘いたかったわけじゃない。
データが取れれば相手は誰でもよかった。
「せっかくですが、やめておきます。自分は夏休みは予定がありますし…」
「そうか。わかった」
その返事に鏡夜はわずかに落胆した。
たしかにその時、残念だという思いが心をよぎったのだ。
鏡夜はそんな自分に驚きを隠せなかった。
『なぜ落胆する必要がある?
俺は何かを期待していたのか?』
鏡夜は自問自答をくりかえす。
確実に自分の思考がわからなくなっていた。
わかっていることが、ひとつだけ。
――ハルヒが来てから、俺たちは変わりつつある。
続く.