■桜蘭高校ホスト部■
□君だけに見せる素顔
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「あのー、すみませんでした、洗面所お借りしちゃって」
ハルヒがおずおずと洗面所の扉を開け、室内を窺うようにひょっこりと顔を出した。
そこには上半身をあらわにした、みるからに風呂上りの男の姿。
「あっ、ごめんなさい!」
あまりにもプライベートな空間に居合わせてしまったばつの悪さに、ハルヒはとっさに目をそらす。
さっき、鏡夜がシャワーを出て火照った肌を冷ましていると、バタバタとホスト部の面々が駆け込んできて、ハルヒを洗面所に放り込んでいったのだ。
鏡夜は仕方なく、ハルヒが洗面所から出てくるのを、濡れた髪のしずくを拭いながら待っていたのだった。
顔を背けたままのハルヒに、鏡夜が声をかける。
「もう具合はいいのか?ハルヒ」
「あ、なんだ、鏡夜先輩だったんですか…びっくりした」
声を聞いて初めてその男が鏡夜だと気づき、ホッとして逸らしていた視線を戻す。
その安心しきった声のトーンに、鏡夜は苦笑する。
夜、男の部屋に2人きりだというのに、何の危機感も持たれていないのだな、俺は。
リゾート向きの、薄手の生地が誘うように軽くゆれるワンピース姿。
しかしあまりにも無防備だ。
一方の鏡夜は、ゆったりめの部屋着のズボンに、裸のままの上半身。
濡れた髪は無造作に乱れ、眼鏡も外していた。
いつもきちっとした服装に知的な眼鏡という姿の鏡夜からは想像できない、ラフな姿だ。
ハルヒはちょっと驚いて、その姿を見ていた。
「どうかしたか?」
「いえ、なんだかいつもの鏡夜先輩とずいぶん印象が違うなぁと」
「ふん、俺らしくないか」
鏡夜は小さく笑った。
「ところでハルヒ。今日の騒ぎの後始末だが、女の子たちへのお詫びの花代はどうすればいいかな?」
「前言撤回!やっぱりいつもの鏡夜先輩だ…。」
ため息混じりにうなだれて言う。
「お花代は自分の借金に追加してください。心配しなくても責任もって払いますから…」
「…やっぱり、わかってないようだな」
鏡夜はハルヒの目の前に立ちはだかるように近づいた。
「お前は自覚がないようだが、俺の目から見ればただのかよわい女だ。」
「え?」
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