■桜蘭高校ホスト部■

□若葉デート
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「もしもし、鏡夜先輩ですか?もしもし?」

耳に飛びこんできたのは間違いなくハルヒの声だ。
いかん。不意をつかれて無言のまま電話に出てしまった。

「もしもし?あれ?間違えたかな…」

「ああ、俺だ」

「えっ、あ、繋がった。あっ、ごめんなさい、今、電話まずかったですか」


携帯を使い慣れていないハルヒが電話口で慌てている様子が目に浮かび、鏡夜は小さく笑った。

「いや、大丈夫だ。それより何か用か?」

「別に用というわけではないんですけど、さっき環先輩から電話があって『今すぐ鏡夜先輩に連絡するように!』と言われまして…」

「ん?どういう事だ」


「環先輩は今、『お座敷列車"なのはな号"で行く春の房総チューリップの里ツアー』に行っているそうです」

「…ほう」

鏡夜は返事に窮した。その報告になんの意味があるのだ。それもわざわざハルヒを介して。


「えーと、環先輩いわく『みんなも誘いたかったのだが、これは遊びではないのだ!須王が出資支援している町工場の方々の慰安旅行をつつがなく遂行するという、父から与えられた重大な任務なのだ!』だそうです」

環の指示で書き留めさせられたメモでも読んでいるのだろう、ハルヒは感情のない棒読みで環の言葉を伝えた。

「まだ続きがあります。『鏡夜に、せっかくの休みに遊んでやれなくてごめんと伝えてくれ。母さんや、父さんはお仕事なんだよ、許しておくれ!』…えーとそれから」

「まだあるのか」

「はい、一字一句間違いなく伝えるように言われました。断ろうかと思ったんですが、かえって話が長引くと面倒なので…」

相変わらずドライな反応がハルヒらしい、と鏡夜は思った。ハルヒは事務的な声で続ける。

「『あとの事はハルヒに託したので、俺がいなくても休暇をエンジョイしてくれたまえ!だけど忘れないでくれ。休みだからと気を緩めるな!家に帰るまでが遠足だぞ!…P.S.お土産はピーナッツサブレです』……以上です」






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