■桜蘭高校ホスト部■

□よみきりSS集
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■夏休みのケイカク■


「あー、涼しい…」


ハルヒは大きく深呼吸をして、図書館のひんやりした空気と本の匂いを吸い込んだ。

「今ごろ、ホスト部のみんなはどうしてるかな」

きっとみんな、世界各国のリゾート地の高級ホテルで快適に過ごしているに違いない。

環は部員参加の夏休みの計画を立てていたようだが、ハルヒはそれを丁重にお断りした。めんどくさいから…ではなく、今年も夏休みには美鈴さんのペンションでバイトをするつもりだったからだ。

だが、どうやら今年はメイちゃんが手伝いに行っているらしい。バイトができないのは残念だが、あの親子が仲良くやっているならハルヒとしても喜ばしいことだ。


「暇になっちゃったし勉強でもするか…っていうか、ホスト部が忙しくて最近ぜんぜん勉強してなかったから、夏休み中に取り戻さなきゃ」



同じ目的の学生たちで図書館は混雑していた。
開館時間の9時からまだ30分も経っていないのに、すでに一人用の仕切りのついた机はすべて埋まっていた。
いい席を取るためには開館前に並んでいなくてはならないらしい。

「一人机を狙っていたのになぁ…明日はもっと早く来ないと」

奥にはグループで勉強できるように4人用に仕切られた机があった。仕方なくハルヒは山のような辞書を抱えながら空席を探しはじめた。

しかしどの机もびっしりと埋まっており、なかなか空席は見当たらない。

「あ、あそこ空いてる!」

一番奥の4人机はまだ男子学生一人だけのようだ。やっと見つけた空席を他の学生たちに取られる前に確保しなくては。ハルヒは小走りでその席へ向かった。

「ここお邪魔しますっ!」

先客の学生の向かいの席に、ハルヒは滑り込むように駆け寄って重たい辞書をおろす。勢いあまって、どすん、と大きな音を立てた。


「わ、ヤバ…」

「騒がしいな。公共の図書館で非常識だぞ?」

「す、すみませ…」


咎める小声にあわてて顔を上げると、そこには鏡夜が座っていた。
数冊の本を手元に積んで、あいかわらずのポーカーフェイスでページをめくっている。


「き、鏡夜先輩!どうしてこんなところに?」


思わず大声を上げたハルヒに、じろりと周囲の視線が集まる。
鏡夜は呆れたようにため息をつくと自分の隣の席を指差した。


「仕方ないやつだな。こっちの席に来い。小声で話すには都合がいい」


ハルヒはバタバタと机の反対側にまわる。あわただしく鏡夜の隣に腰を下ろすと、声をひそめて詰め寄った。

「ちょっ、何してるんですか先輩?」
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