■桜蘭高校ホスト部■

□よみきりSS集
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■降水確率100%■



ガチャリ、と戸が開く音で鏡夜は振り向いた。慌ただしく入って来たのはついさっき部屋を出たはずのハルヒだった。

「あれ、先輩。まだいたんですね」

他の連中はもう帰った。この部屋に残っていたのは鏡夜ひとりだ。

「ハルヒ?帰ったんじゃなかったのか?」

「外に出たら突然降り出してきたんですよ、まいったなぁ」

そう言って髪からしたたる雫を素手で振り払う。


「傘がないのか」

「はい…。先輩、余分に傘持ってませんか?」

「悪いが、俺は迎えの車が来るからな。自分では傘は持ち歩かないんだ」


鏡夜はそっけなく答える。


「そっか、困ったな…」

止むまで待つしかないか、とハルヒはため息まじりで窓の外を見る。

ザッと降り始めた通り雨だ。そう長くは続かないだろう。


…だが。


「…仕方ないな。うちの車で送っていこう」

「え、いいんですか?」

「おまえ一人置いて帰るわけにもいかないだろう?たいした距離でもないしな」

「わぁ、助かります!」


大袈裟に礼を言うハルヒにチラリと視線を向ける。


薄手のカーディガンはしっとりと濡れて、細い肩のラインを目立たせる。
白い鎖骨にそって流れ落ちる雫。
つややかに光る肌に目を奪われる…。



鏡夜は着ていたシャツを脱ぐとハルヒに放った。

「…風邪ひくぞ、これ着てろ」


ふわり。


「ありがとうございます」

そのシャツはハルヒには大きすぎて、羽織るとシャツの中にすっぽりとくるまってしまう。


「なんだかてるてる坊主みたいですね」

ハルヒは窓ガラスに映る自分の姿に吹き出した。

「でも、とても…あったかいです」


そう言って微笑むハルヒの柔らかい笑顔に、また目を奪われる。


思わぬ幸運。二人だけの時間。


どうかもう少しの間、通り雨が止みませんように…。




=終=
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