□よみきり短編□
□お題バトンSS集
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創作意欲もりもりこバトム
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○廃れた街の真ん中で
見上げた空はあの日のままだった。なにもかも変わってしまったと皆は言うけれど、私は決して忘れない。
一筋の熱が頬を濡らす。
○その涙さえも
あの人を思い出せば、まるで血しぶきが伝うようで。
もはや敵のものか、自分のものかもわからない血で赤く染まった身体。
止まない砲撃。倒れる仲間たち。恐ろしかった。身がすくんだ。
だが、あの人の背中だけを見つめて私は走り続けた。がむしゃらに大刀を振り回し、あの人についていく事だけを考えた。
いつか、あの人の役に立ちたい。あの人の盾となって死にたい。
私の願いはそれだけだった。
だから、
○最初で最後の
わがままだった。隊を離れたくないと、最期まで共に戦いたいと私は泣いた。それが叶えられないのなら腹を切る覚悟だった。
わめき立てながら自らに突き立てた小刀は、肌に触れるまえにあの人の拳で弾き飛ばされる。
そして、強い力で頬を張られた。
○愚かな私は
気付かなかったのだ、あの人の哀しい眼に。
『あなたのために死にたい』という私の思いが、あの人を苦しめていたなんて。
○また明日、
命があったなら、いつか会えるさ。
生き延びてその日を待てとあの人は言った。
その言葉を信じた、愚かな私。
すでにあの時、あの人は決戦へ向かう覚悟をしておられたのだから。
○例えばあの日の私達が
対等な武官同士であれば、あなたは心の内を話してくれましたか。
共に戦って死のうと言ってくれましたか。
○願わくば
あの日に戻ってあなたに伝えたい。
例えあなたが望まなくても、あなたを苦しめていたのだとしても、私は本気であなたの為に死にたいと思っていた。
最期のその瞬間まで、あなたと共にいたかった。
あなたと一緒に生きたかった。
○そしてようやく
今、気付いたのだ。
それは私の『生きることへの執着』だと。
口ではいつでも死を望むような事を言いながら、本当の覚悟などできていなかったのだ。
あなたはそれに気付いていたのですね。
○残されたのは、
あなたに殴られた頬の痣。
○守ると決めたあの人の手は
逆に私を突き放したのだ。
私を守る為に。
○いつかの主君へ
私は生きています。あなたのいない、この時代に。
○もし夢であえたら
…精一杯強がってみせよう。あなたに助けられたこの命を持て余しているなんて、知られないように。
○夢から覚めたら
残酷にも時代は変わっていた。
私が望んだ未来は、もはやどこにもない。
○一人ぼっち
この新しい時代で私は名前を変え、過去を隠す。
持っていたものはなにもかも失った。希望も、信念も、仲間も。
○それは突然に変革し
義を信じた我々は賊軍と罵られ、天よりも清きあなたは悪の鬼神と語られている。
私はゆっくりと耳をふさぐ。
○大地よ海よ、
教えてほしい。もはや私が成すべき事などありはしない。
それでも私は生きていかなくてはならないのか。
私は頬に手を当てる。
せめてこの痣が消える日が来ませんように、と願いながら、私は空を見上げる。
=end=
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★ひとこと★
旧幕府軍の生き残り武士の視点で。
義に殉じる忠臣を書くつもりが、生きなくてはいけない事のほうがツライだろう…という方向になりました。