■桜蘭高校ホスト部■
□未確認の恋愛
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とうとう来てしまった。
伊豆半島の最南端。
海に面した高台にぽつんと建つ、ペンション風のお屋敷。
背後は静かな山、窓の外は一面の海というまさに初日の出を拝むには絶好のスポットだ。
ふもとに下りれば観光ホテルが連なり、それなりに人の往来はあったようだが、この辺一帯は鳳家の私有地らしく観光客は見当たらない。
ハルヒはぼんやりと豪奢な部屋を見渡す。
レンガ作りの暖炉に火は入っていないが、空調が効いているので部屋はとてもあたたかい。
壁に据え付けられたアンティーク時計は11時40分を指していた。まもなく大晦日の夜が終わる。
まるで誘拐のようなやり方で連れて来られたのだが、鏡夜を責めるわけにはいかない。ハルヒの無防備さがまいた種なのだ。
すべてはこの『カード』のせいだった。
1枚につき1回、持ち主のどんな依頼にも応えるというカード。
それを盾にうまく言いくるめられ、あれよあれよと言う間に、今こうして海辺の別荘から真っ黒な海を見下ろしている。
ハルヒは窓ガラスに映る自分の情けない顔をじっと見た。
断ることも途中で逃げだすことも出来たはずなのに、なぜこんなところまで来ちゃったんだろ…。
「目が覚めたか?」
「うわっ!」
急に声をかけられ、ハルヒは飛び上がるように振り向く。
そこには両手にマグカップを持った鏡夜が立っていた
「コーヒーを入れた。飲むか」
「はい、いただきます」
白い湯気を立てるカップを受け取り、暖をとるように両手でくるむ。
コーヒーの香を吸い込むと、ぼんやりした頭がすっきりと目覚めるのがわかる。
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