■桜蘭高校ホスト部■
□By My Side
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さすが大富豪のお屋敷はスケールが違う。書斎というよりこれは図書館だ。
だだっ広い部屋の中で、ハルヒはうーんと唸って縮まった腰を伸ばす。ぼんやり天井を見上げていると、背後から容赦ない声が飛んだ。
「まだ終わらないのかハルヒ。日が暮れてしまうよ?まだ隣の部屋も残っているんだからね」
端正な顔におなじみの魔王スマイルを貼り付けて、鏡夜は腕を組みながら壁にもたれて立っていた。
一方のハルヒは、見るからにサイズの合っていないブカブカの割烹着と三角巾、両手に雑巾をにぎりしめた恰好で、勢いよく振り返ると鏡夜と真正面に対峙した。
「無理ですよ!この部屋だけでもう2日間かかってるんですから」
「しかし今日中に終わらせて正月飾りを飾らないと、今日はもう大晦日だぞ?本来は一夜飾りは縁起が悪いんだ。
おまえの作業の遅れで鳳家の来年の運気が下がったら、責任はどう取るつもりかな?」
鏡夜はサラリと言ってのけるが、鳳家の豪邸の窓の数といったら半端じゃないのだ。
これを一人で磨きあげる労力は鏡夜もわかっているだろうに。
ハルヒは口を尖らせて言う。
「先輩でも縁起とか気にするんですか?意外ですね」
「なにか不満でも?まだコレの有効期限は残っていると思うが」
ハルヒが怨みがましい目を向けると、鏡夜は余裕の表情でポケットから名刺大のカードを取り出して見せる。
「…わかってますよ、ちゃんとやります」
ハルヒはあきらめ気味につぶやいて作業に戻った。
そもそも何故ハルヒが鳳家の大掃除に駆り出されているのかというと、話はホスト部主催のクリスマスパーティにさかのぼる。
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