■桜蘭高校ホスト部■
□眼鏡の誘惑
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「ああ、乙女の瞳に映るこの星の輝きの中に、僕は吸い込まれてしまいそうだ…」
「環さま…」
豪華な調度品に飾られた部屋。柔らかな金の髪の王子が、2人掛けのソファに並ぶ女生徒の頬に手をそえて、その潤んだ瞳を覗き込む。
頬をバラ色に染めた女生徒は、もうすっかり夢心地の様子だ。
これがいつもの風景。ここは「ホスト部」なのである。
「お金持ちの考えることはわからない…」
ハルヒは静かにため息をこぼした。
とある事情で800万の借金を背負い、その返済のために女子である事を隠しこのホスト部の活動に参加した…いや、させられたのである。
お茶を飲んで普通に話をして、それで女生徒たちが喜ぶ顔を見るのは悪くない気分だし、最近は贔屓客もついて接客の楽しさを感じ始めてもいるけれど…。
無意識にまたひとつため息をつく。
「そもそも、その借金の原因だって、このホスト部が元凶のような…」
「「どうしたの、ハルヒ?」」
完璧なユニゾンで話しかけてきたのは常陸院の双子だった。
「何度もため息ついちゃってさあ」
「そう!それも殿を見つめながら!」
左右からハルヒを挟むように腕を回し、じゃれるように頭を小突いてくる。
「別に見つめてたわけじゃないけど…。借金を減らすには、自分も環先輩とか光たちみたいな技を使えるようになった方がいいんじゃないかと思って」
「でも、ハルヒは天然キャラでお客ついてるじゃん?」
「ん〜、どんなことをすれば女の子が喜ぶのか、よくわからないから。ああいう風にされると女の子はうれしいのかなぁって」
…ちょっと思っただけで、やっぱり自分には向いてないよね!と笑って続けようとしたが、両側にぴたりと貼りつく小悪魔たちは、いいことを思いついたというように目を合わせてニヤリと笑っていた。
「「ふ〜〜ん」」
「…あ、なんかよからぬ事考えてない?二人とも…」
どうやら余計なことを言ってしまった自分に対して、ハルヒは今度は思いきり大きなため息をついた。
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