□よみきり短編□

□魅惑〜リストランテの夜
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閉店後の静まり返ったレストランに、コツンという彼の足音がやけに響く。彼は私のテーブルに近づくと2つ並んだグラスに静かにワインを注ぐ。

私はおとなしく腰掛けたまま、その美しい仕種を見上げていた。薄暗い照明の中で、彼の指輪がきらりと光って見えた。


「仕事はここまでです。あとはプライベートを楽しみましょう」


ヒュッという音をたてて細い腰にまいた白いエプロンを外す。何気ないそのしなやかな立ち姿さえも魅惑的だ。
彼は私の視線に気づいて静かに笑う。


「これが気になりますか?」


彼は思わせぶりに薬指をなでる。私は心を読まれたような落ち着かない気持ちでつい目をそらす。


「これを外したら…今夜あなたを帰せなくなりますよ」


それでもいい、と私は思った。
初めてこの店に来た時から、そうなることを望んでいたのだから…。



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