■桜蘭高校ホスト部■

□若葉デート
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昼下がりのショッピングモールは大混雑で、コーヒーショップもファストフードも満席だった。


「なんだか…スミマセン」

缶コーヒーを手渡しながら、恐縮しきった様子で言う。二人はショッピングモールの敷地内にある公園のベンチに座っていた。

「何がだ?」

「ほんとにこんなトコ来てよかったんですか?なんかすごく身分不相応なことさせてる気がして…」

見回せばガラガラとカートを押す主婦やおもちゃの刀でチャンバラをはじめる子供たち。隣のベンチでは両手いっぱいの戦利品を見せあって女学生たちがはしゃいでいる。

まさに庶民の巣窟である。
鏡夜のような環境に生まれた者にはどう映るのだろう。


「気にするな。確かに人ごみの中で自らの足を使って買い物した上に、屋外のベンチに座るなんて事には慣れていないが、なかなか得難い体験ができたよ」

「感謝されてるのか怒られてるのかわからない…」

「感謝しているんじゃないか。鳳グループもいずれこういう複合施設にも手を広げようと思っているし、庶民の生活を知るいい参考になった」

そう言うと缶コーヒーを飲み干して隣のゴミ箱にシュートすると、カランと小気味よい音をたてて収まった。

複雑な表情のままのハルヒをチラリと見て鏡夜は続けた。

「どうして今日、俺を誘ったんだ?まさか環の伝言を真に受けたのか」

「うーん。いえ、なんとなく…です」

本当は、ちょっと心配になったのだ。
効率を重視する鏡夜ならば、こんな長い休暇を無駄に過ごすはずがないと思った。それなのになんの予定も入れなかった理由は。

…もしかしたら環からの連絡を待ってたんじゃないか、となんとなく思ったのだ。

だがそれを言っても鏡夜が認めるわけがない。きっと不機嫌になるだろうし。ハルヒは言葉を濁した。


「スミマセン、付き合わせてしまって」

「いや、俺の休暇の行動圏内よりはよっぽど娯楽性にあふれていたよ」


遠回しではあるが、それは鏡夜にとって「楽しい休日だった」という意味なのだろう。ハルヒはホッとして笑った。

「鏡夜先輩って意外と買い物の仕方が堅実ですよね、衝動買いじゃなくてちゃんと吟味してる感じで。さっきは何を買ったんですか?」

「いや、たいしたものじゃない。…お前、『金持ち=ショーケースの端から端まで』とかいう買い物を想像してないか?まったく、イメージが貧困すぎるぞ」

2人は顔を見合わせて笑った。





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