書庫

□あめふり
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あめふり



もうそろそろ、雨はやんだだろうか?
かなり長い間、作業していたつもりなのだけど、何せこの状況。
時計が完全に隠れてしまって、全く時間の確かめようがない。

外がどんな大雨だろうとカンカン照りだろうと、ほとんど関係のないこの部屋には、ケロロ君のお宝が山積みになっていて、色々な物が山に埋もれてしまっている。
さっきも、軍からの重要書類が出てきたりして、大いに肝を潰した。

「ドロロー、作業ははかどってるでありますかー?」

いつの間にやらいなくなっていたこの部屋の主がやっと今、帰還した。
いつものことだけど、悪びれる様子が見られないので、僕は顔をしかめた。

「今まで何処行ってでござるか。拙者一人にやらせてヒドいでごじゃる」

「いやーだってさ、やっと雨あがったんでありますよ?今洗濯物干さなきゃ、明日大変なんでありますよーっ」

よいしょっと、さっきから作業していた僕と背中合わせになるようにしてケロロ君もしゃがむ。
僕たちの間はほとんどないに等しく、少しでも動けば相手に当たる距離。下手に動けばこのちょっとした塔になっているプラモデの箱たちに、僕らも生き埋めになるだろう。
背後でケロロ君も作業を始める。
手際が良いわけではないけれど、丁寧に一つずつ整理されていく。

ケロロ君のたてる僅かな音や声、背中から伝わる体温が心地よくて、ずっとこんな時間が続けばいいなぁっと目を瞑って、幸福感に浸かっていた。

「ゲロ?これは…」

「…どうかしたの?」

また大事な書類でも発掘したのかと思ったけど、どうやら今回は違うらしい。
ケロロ君の手にはなにやら古びた紙切れが握られていた。

「作戦メモでありますよー。しかもペコポンに来たばっかしで、ドロロとも再会出来てない頃のっ」

胸がズキリと痛んだ。

「ちょっと見てよドロロー。これはちょっとありえなくねー?」

楽しそうに話すケロロ君には悪いけど、僕は胸が苦しくて話を聞くどころではない。

「いやーっ本当、懐かしいであります」

酷く、吐き気がする。
ケロロ君の声を聞きたくない。僕の全く知らないことなんて話してほしくない。
浅ましい。僕が、君の傍にいなかった時間に妬みを感じているなんて。

「あー、このネタもう一回やっちゃおっかなー?またギロロに猛反発されそうだけど」

日向家の庭に大量に干してあるであろう洗濯物を頭に浮かべて、天井を見つめた。


もう一度、雨が降らないだろうか。





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