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□空火照り
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空火照り
夕暮れの中、歩き慣れた道には変に背の高い影法師が並んで二つ。
ついさっきまで一緒に並んでいたもう一つの影はもうここにはなくて、あの赤い背中はもうこの夕暮れ紛れていなくなった。
残りあと数十歩。
あと少しこの道を歩いたら分かれ道が見えてきて、そこで隣を歩くケロロ君ともさよならしなくちゃいけない。
「なんかさ、遊んでるとあっという間に時間ってすぎちゃうよなー」
「えっ、あぁ…うん。そうだね」
授業もこれくらい早く過ぎちゃえばいいのにとぼやくケロロ君から地面に視線を落とす。
なんで楽しい時間って、こんなに早く過ぎちゃうんだろ。
なんで、終わっちゃうんだろう。
帰りたくない。
けど、分かれ道まであとはあとちょっと。
「ゲロ?どーしたゼロロー」
「ううん、何でもないよっ」
「………」
ケロロ君は僕の顔を何も云わずにじーっと見たあと、目を閉じ腕を組んだ。
いかにも何か考えてるってポーズ。
「あの、ケロロ君…?」
おそるおそる名前を呼んでみたら、ケロロ君の目がぐわっと開いて僕の腕を掴んで今歩いてきた道を、ほとんど僕を引きずるように走り出した。
「ちょっと付き合えゼロロ!」
「え、えぇ!?い、今からなんて、ダメだよ!早く帰らないと叱ら「じゃあ今すぐゼッコウっ!」
「そっ、そんな〜」
そうは云いつつも、僕は嬉しくてしょうがなかった。
早すぎるスピードに足がもつれて、上手く息が出来なくなってるのに、僕はまた口を開く。
「ねぇケロロくん、どこに行くの?」
「んなの知るかー!!」
「えぇーっ!?」
結局めちゃくちゃに走り回っただけで、帰ったのは辺りが真っ暗になってからで、当然この後僕たちはこっぴどく叱られた。
あの時、ケロロ君も僕と同じように、あの分かれ道を夕暮れを、少し寂しいと思ったのかなぁ?
今更だけど、今更だからこそ訊いてみよう。
君はまだ覚えているだろうか?
。