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□幻を愛したあなた
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幻を愛したあなた



背中で感じる気配と視線。

本人はなんとなく視線を寄越しているつもりみたいだけど、バレバレだって。

後ろの奴にバレないように、こっそりため息をつく。

…あのさ、その間違いだらけの『我輩』はいつ形成されちゃったの?
お前は我輩の中に何を見てるのさ?
そんな好意を寄せられたって、我輩は応える術を持ち合わせちゃいないっての。

黙々と目の前の仕事を片付ける。
早く終わらせたい。
こんな状況、いつまでも続いてたら自棄起こしそう。


お前の目に写る『我輩』と、我輩は違う。
『我輩』じゃない我輩がお前の気持ちには応えられない。

だからそんな視線、我輩に向けるなっ。

「…ちょっとドロロ、見てるだけなら少しくらい手伝ってよ〜」

視線に耐えられなくなった我輩は、問題の人物に声をかける。

「駄目でござる。これは隊長殿がもう侵略など目論む気など起こさぬよう夏美殿が課せた罰。拙者はただの監視役でござる」

ピシャリと即答するお前。
あんな視線寄越してくるくせに冷静装っているのがムカつく。

あーあ、ツラいなぁこの状況っ。
もう何もかもぶち壊してしまいたい。
想いは一緒なのに、通じ合えないなら終わりにしちゃった方がよっぽどマシじゃない?






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