クリスマス番外編


「優羽ークリスマスのプレゼント、何がいい?」


「ね「「駄目よ」」…この服……分かった」


「あぁ、服ね。服なら…って優羽?」


「ほっといて大丈夫よ。去年渡した猫の縫いぐるみの服でしょ、その服か縫いぐるみにしときましょ」


「それならいいんだけど、何か違うような…。あ、お父さんは?」


「い「ダメよ」…のぬい「何匹枕元にいると思ってるの」…スプーン」


「それならいいわよ。優羽も猫のスプーンにしときましょうか」


そうと決まれば母さんは出掛けて行き、お姉ちゃんも一緒について行ったみたい

先に部屋に戻った俺は、飾られている猫のぬいぐるみを抱きかかげる

…猫の服が欲しい

この子の服も欲しいけれど、先にあげたい子達がいる

カレンダーの21日は赤ペンで猫マークを記している
この日に亜美さん達の家にお呼ばれしているのだ

せっかくあの子に会えるんだから、時期も時期だしプレゼントをあげたい
あの子達にもクリスマス気分を味わわせたい

そう思ってペットショップで猫の服を見に行ったんだけど、なんだが着せてあげたいイメージの物はなかった

こう、まだ小さいあの子にふわふわでもこもこな服を着せてあげたい
一緒にいる子にも色違いの服をあげたい


「無いなら作るしかない」


裁縫や編み物の知識は家庭科の授業程しかないけど、そうと決まれば近くの手芸店へと足を運んだ





「何かお作りになるんですか?」


「猫の服を作りたくて…初心者でも出来そうなのってありますか?」


「良かったら丁度これからその講座が開かれるので参加してみませんか?見本はこちらになるのですが…マントっぽく足を通さないので服嫌いな猫ちゃんでも着てくれますよ」


「是非お願いします」


見せられた見本を前に目を輝かせれば、即答で返事をした
フード付きの服でお尻まで隠せ、何と言ってもファー付きで可愛い

見本はトナカイさんとサンタさんだったけど、黒と白い布を選べば早速講座に参加した




「出来ました」


「いいじゃないですか!初心者とは思えませんよ。…え、二つ?」


「ありがとうございました」


「い、いえ、ありがとうございました。またお越し下さいませー」


全部手縫いだったので俺にも分かりやすく、少し歪んだりしたけどファーを付ければ誤魔化すことが出来た

一つは白地の布に黒いファーを淵に縫い付け
もう一つは黒字の布に白いファーを淵に縫い付けたもの

二つとも教えて貰ったお姉さんに見せ褒めてもらえたし、きっとこれならあの子達も着てくれるはず


帰り際に赤い布と茶色い布を買えば、家でもう二着、ぬいぐるみ用にと
ちくちくと縫っていればお父さんが覗きに来て、その手芸屋へと買い物に出掛けて行ったのだった



21日が楽しみです




ーーー


その頃、手芸屋にて


「さっきの子、格好良かったわね」


「えぇ、美人で役得でしたよ。…私ちゃんと見てたはずなんですけど、あの子いつの間にか二着作ってたんですよ」


「貴女が他の人を見てる間暇だったんじゃないの?」


「でも二着ですよ?私達でも同じ時間掛かるのに彼初心者だって」


「あのー…」


「あら、お疲れ様。どうかしたの?」


「さっき珍しく男性のお客様見えたんですよ。しかも格好良くて…」


「えーっ、男性客が来るだけでも珍しいのに、こっそり呼んでくださいよー」


「私も見たかったわ」


「すみません…私講座があったので…。それでそのお客様も参加されたんですよ」


「一緒ですねー。もしかしてしっかり見てたのに二着作ってたとかですか?」


「それが…五着も作ってまして…」


「「えぇっ!?」」


「ご、五着って…」


「私達でも無理よ」


「冗談ですよね?」


「い、いえ…私もびっくりしたので、それに中々のセンスだったので写メ撮らせてもらったんです。はい」


「サンタ服にトナカイ服…しかもアレンジされてますよこれ」


「そ、それに豹柄に魔女服…青くて丸い猫型ロボットの服まで…」


「…これ売り物になりますよ」


「じゅ、住所とか聞いてないの?彼を雇いたいわ!」


「き、聞いてません…布買ってすぐ帰られたので…名前ならありますけど…」


「この名前どこかで…あ」


「さ、さっきの子のお父さんですよ!」





ーーーそんな会話が繰り広げられているとも知らず、優羽の家では


「優羽ー母さんが…そのぬいぐるみの服どうしたの?可愛いじゃない」


「作った」


「へー、上手に出来たね。あ、せっかくだから皆に見てもらおうよ。お店に飾ってみない?」


「…いいの?」


「いいよ、店長こう言うの好きだから、皆も喜ぶよ。その方がこの子達も楽しいでしょ?」


「うん、じゃー飾ってもらいたい」


「うん、店長に言っておくね?母さんが呼んでるから下に行こ?」


「はーい」



ーーーその頃、一階では



「あなた、これ何?」


「お洋服」


「それは見れば分かるわよ。それにしてもよくもこんなに作ったわね…全部服着てそう」


「母さん」


「何?」


「早いけど、メリークリスマス」


「これって…」


「お気に入りだって言ってた服、真似て作った」


「あなた…それにネックレスまで…」


「あ、外しちゃ駄目」


「え?」


「それはその子の」


「私には?」


「………、その子がプレゼントだから」


「……ありがとう」


嬉しいものの、複雑な心境のお母さんなのでした

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