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□幽霊とは
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「いて」
「ご、ごめんなさい!大丈夫ですかぁ…?」
「あ…あぁ」


コンプレックスである低身長を活かす様な、見上げれば潤んだ瞳で小首を傾げる自分。
ぶつかった人の怒り顔も、絆され照れ隠しに頭を掻く始末。
ぺこりと頭を下げれば、らんらんと廊下を進む自分の姿に叫ばずにはいられなかった。


もうやめてくれ!


ーーーーー



「あ、あのさ、カリンちゃんに協力するとは言ったよ。勿論俺の体も好きにしていいよ?…でも誰彼構わずこう、なんと言うか…」
”フェロモンを振り撒く?”
「そう、それ!どうにかならない?」
”うーん…私女の子だから、許して?”


可愛くウィンクされれば、仕方ないなぁとこうべを垂れる。
信じられない様な話だが、この浮遊しているビキニギャルは俺にしか見えない幽霊らしい。…なんか羽生えてるけど。

生前は近くの女子高生だったしく、不慮の事故で亡くなってしまった。それが余りにも突然で、まだ自分が死んだ事が受け止められず浮遊霊に。
そしてそれがなぜか俺にだけは見え、話せるのだ。彼女”カリンちゃん”はそれはそれは感動し、今や俺の部屋に滞在している。

月日が経つに連れ、なんとなく自分が死んだ事実を受け止め様とはしてるものの、華の高校生。恋の一つでもしてみたかったらしい。

好きだった近葉先輩…俺の高校にいる、確かバスケ部の部長。スラりとしたスタイル通り、素早い動きで相手を交わしゴールを決める。表情は冷たく、よく幼馴染みの青山が怒られている姿を見るし、青山も怖いだの何だの愚痴っている。
でもその凛とした姿は、確かに女の子に騒がれていた。

思いを伝えれば成仏出来るかも、と言う何だかベタな漫画にでも有りそうなストーリーに俺は加担してる。何と言ってもカリンちゃんが可愛いからだ。


「先輩に気持ち、伝えれそう?」
”それがドキドキしちゃってぇ…もうちょい時間欲しいかな。あ!それと…見られてるのも恥ずいから、ね?”


ずい、っと近付かれ眉の下がった甘えん坊な表情で訴えられれば、断れる男子高生はいないだろう。しかも見た目によらず恥ずかしがり屋だなんて、こっちがドキドキしてしまう。

カリンちゃんが俺の体に入ってる時は、俺が浮遊霊に。一つの体には一つの魂しか入れないらしい。
俺も状況把握の為に着いて回っていたけど、…まぁ何かあったなら後で話を聞けばいいか。

俺が女の子なら身の危険を案じるかもしれないけど、その必要もない。カリンちゃんに申し訳ない程の地味顔の眼鏡だからな。
…今更だけど、告白される先輩が可哀想。その後の俺の高校生活も棒に振るが。
それは長い人生、こんな貴重な体験が出来てるのだから、プラマイゼロってことにしよう。何よりカリンちゃんが可愛い。


”ねぇねぇ、みっきー。明日カリンが登校してもいい?球技大会でしょ?だからぁ…”
「いいよ。俺体育苦手だし、ちょうどいいや」
”ありがとー!カリンちょー頑張るねっ”


ぴょんぴょこ跳ね回る幽霊を背に、明日困らない様に体操着など準備していく。みっきーと言っても俺に黒くて丸い耳はない。宮北未希と言う名前を可愛く呼んでくれてるのだ。


”クラス対抗とか、確かその辺で先輩との接点があったはずなんだよねー”


流石女の子、リサーチが凄い。
さてと、明日出る種目もカリンちゃんは知ってるはず。俺はアニメとか映画でもダラダラ見とくかな。
幽霊になると物は触れない。だから予めセッティングしておいて俺は部屋の電気を消したのだった。
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