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□俺を見て
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「あーもうっ、パン買ってきて!」
「買ってきてるよ。メロンパン」
「今日は焼きそばパンな気分っ」
「じゃー俺がメロンパン食べるから」


それでも尚、不満そうに腕を組み椅子を揺らしているのは、自他ともに認める我が儘王子。俺の幼馴染みの由夏だ。

パクパクと焼きそばパンを食べたかと思えば手を出され、まだ口を付けてなかったメロンパンを差し出す。


「あんまり我が儘言うなよー?貴幸痩せちゃうぞ?」
「いーの、こいつ最近太ってきたからダイエットさせるの」


黙ってれば格好良い方なんだけど…。そして我が儘なのもどこか憎めず、彼の周りはこうして人が集まってくる。

中学の進路がまだ決まってない頃、寮生の男子高に行きたいと言い出し、一人だと不安だと言う両親に俺の許可無く俺と一緒だからと勝手に納得させたのだ。
気付けば俺の両親の耳にも入っており、反対どころか賛成し部活推薦があった彼とは違い俺は猛勉強するはめになってしまった。

…まぁ、それでもついて来てしまったのは、心配半分、彼と居ると楽しいから。

でもこのままでは部活まで体が持たないので、持って来ていたおにぎりを二個取り出す。一個は黙って由夏が持っていくからだ。


「てか何で俺の誘い断んの?ありえねーじゃん」
「…ノーマルなんじゃない?」
「それでもこの俺が行こうって言ってんの、部活も全然相手してくんねーし」
「ライバル意識…とか」
「そ、それなら…仕方ないな。俺上手いもんな」


納得はするもしょげてる彼の頭を癖で撫でれば、その手を叩かれてしまった。


「子供扱いすんな」
「ごめんごめん」


頬っぺた膨らます姿とか、本当に昔っから変わらないや。

進路の事も部活の事も、ちょっと勉強はあれだけど、恋愛も…猪突猛進とはこの事なんだろうなって改めて感じていたのだった。


ーーー


「…何?」
「残るなら、由夏の相手してもらえればと…。二人でしか出来ない練習とかフォームの見直しもありますし」
「君がやってあげれば?」
「俺他にする事が…」
「へー…俺も練習中だから、ごめんね」


あはは…本当に、前途多難だな…。由夏も何でこの人好きになっちゃったかな。いつもにこにこしてるけど笑顔ばかりで表情読めないから怖いし、俺はちょっと苦手…。…由夏は面食いだったのかな。


「ドリンク置いておきます」


まぁ、誘うのに失敗して由夏に怒鳴られるのはいつもの事だし、俺もさっさと用事済ませて帰ろう。マネと言っても仕事は多いし…お腹空いた。

空いたお腹を撫でながら由夏に文句言われてる姿を、ドリンク片手に眺められているなんて、気付く事はなかった。
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