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sideー田中太一


はうぅ…最近幸せだなぁ…。
あんなに早く新のセーラー服姿が見れたし、どさくさに紛れて遠慮なくセクハラもしちゃったし、新の声だって…えっちかった。その上新がお礼にって沢山甘やかしてくれる。

やっぱり前々から思ってたけど、新のやらしい声があいべちゃんにそっくりだ。この前はもう本人かと思ってしまう程。
…そのせいで最近はもうるるんちゃんシリーズのCDが聞けなくなってしまった。聞いたら最後、新の顔が見れなくなってしまう。

百枚以上撮ったはずだったのに、一枚しか残ってなかった新の写真。
でもこれが一番のお気に入りだったからいいのだ。一番きわどくて、いやらしくて…こんな短いスカートをひらひらさせて、お尻振っておねだりとか…。


「ねぇ太一…えっち、シよ…?」


う、あ…もうそのスカート捲りたいし、お尻を撫で回したい…っ。


「太一ぃ…気持ち良くして…?」


ぶふっ、あぁもう!色んな音声が混ざった上に勝手に再生されてしまうであります!
前は上手く映像が想像出来なかったのに、最近はもう…全くけしからん!


「お風呂上がったよー…。最近出過ぎじゃない?大丈夫?」
「だ…だいじょーぶ…」


あっちもこっちも元気過ぎて、今の所毎日鼻血を出しても普通に過ごせている。
手当てしてくれそうな新から視線を逸らし、逃げるように早々と洗面所に向かい顔と手を洗っていく。

…仕事場でどんなグラドル見ても、アクシデントのポロリを見ても、人気女優とのキスシーンがあっても鼻血なんか噴き出した事はない。完全に原因はあいべちゃんと新。今は新だけだ。

ああ…ナース服の新とか、マジ白衣の天使。…俺もう末期かも。


ーーー


「ただいまー、新ー」


あれ?おかえりーの声が聞こえない。
部屋の電気も暗く、スイッチを入れればラップされてるご飯とメモが残されていた。

”今日仕事で帰って来れないかもしれないので、先に寝ててください”

メモとかメールの時だけ、ちょっと敬語っぽくなるのが新の癖だ。

寂しさを感じながらも温めたご飯を食べてお風呂も済ませ、テレビをつける。
何となく知らないアニメを流しながら携帯を弄っていた。


”まだお仕事?”
”今休憩中です。ご飯食べましたか?”
”うん、今日も美味しかったよ。ご馳走様”
”ありがとう。テレビ見てないで早く寝て下さい”
”はーい、そっちも気を付けてね”


…監視カメラでも仕掛けられているのかと、部屋をぐるりと一周見てしまった。

ちょっと元気になりながら、テレビに視線を戻す。

こんな普通の少女アニメは夕方放送すればいいのに。折角のアニメが見る年齢層が上がってしまうぞ。


「ふふ、またそんな事を…」


きったー!あいべちゃんじゃん!ラッキーっ。え、少女漫画にもあいべちゃん出てたんだ…全出演見てた訳じゃないけど、うっかりしてたなぁ…。そりゃー深夜に放送しないと。

んー?でもこのキャラクターどこかで見たような…。気のせい?

それからしっかりと眺めていれば、どうやら彼女は弟らしく、そして…。


「やっ、ああ…っ、もうホントに駄目…!」


相変わらずあいべちゃんの演技凄く上手だなぁ…。凄く役に馴染んでる。まるで本当にされてるみたいな迫力……。……ん?


「お…お願い…何でもするから秘密にして…?」


この台詞、聞いたことあるような…。前より感情が篭ってるけど、確かにさっきの台詞もこの台詞も覚えがある。

…何か変な汗流れてきた。

テレビから流れるあいべちゃんのやらしい声もそこそこに、新の部屋に入る。
あったあった、この漫画だ。

パラパラと捲れば、この前見たシーン。今アニメで流れていたものだ。

それが新の部屋から聞こえて、この前も役作りで悩んでて、似たようなシチュを俺とやって……え、え?
今アニメで流れてたなら、オーディオとかじゃなかったって事だよな?

そんな、まさか…た、たまたま、偶然じゃない?
…でも何でこのキャラクター、マシュマロ食べてるんだろ。

だらだらと流れる汗を拭いながら本棚にそっと漫画を戻す。

で、でもさ、この漫画だけ家にあるのも変じゃない?あいべちゃんだって言うなら、今期のアニメだって、せめて前期分は持ってないと…。


「いっ」


部屋をぐるぐると回っていれば足の小指を棚の角にぶつけてしまった。
落ちてきた本を涙目で片付けながら、ふと違和感に気付く。
この棚、奥行き広くない?もしかしてこの書籍の後ろにずらーってあったりして。
流石にないか、と半笑いで奥に手を伸ばしてみれば…本の感触。一冊取って表紙を見れば…本を持つ手が震えてしまった。
一段目、二段目、三段目と前の本を出して奥の本を携帯のライトで照らしながら背表紙を見れば…尻餅をついてしまった。

お…俺が見てたアニメばっか…。い、いやでも、新もオタクだしこのくらい…。
…でも何でるるんちゃんのゲームまで…エロゲはしないって言ってたのに。俺が好きだから買ってみた…とか?…都合良すぎ?

こう、刺激的な夢を見るようになったのも、新と出会ってから。
ぶっ倒れた時なんて、その前の記憶が曖昧になっている。…俺がやましい事考えてたのは覚えてるんだけど、それが原因かなって。…もしかして新が何かしたとか?

もう全部が全部、偶然って方が都合良すぎない…?…セクハラに夢中で似てるだけかと思ったけど、一回新の口から、目の前であいべちゃんの声も聞いたし…。う…あぁ、頭がくらくらしてきた。とりあえず片付けよう。

ふらふらとリビングに戻れば、もうとっくにアニメは終わっていた。ぐったりとソファーに寄りかかる。
本人に確認してないから絶対とは言えないけど、多分そうだ。


……新があいべちゃん…か。


じゃ、じゃーお、俺はあの天使と同棲して、毎日ご飯作ってもらって……お、おう、何か興奮してきてしまった。

ふと目の前にあるのは畳んだままな新と俺の衣服。このパンツは前に見たものだ。
…女装もしてもらったし、ご飯食べてるんだから、俺の夢って叶ってたんじゃ…?

え、じゃー新を抱くって事は同時にあいべちゃんと寝れるって事で…お得だな、うん。同一人物なら浮気にもならないよね?


「ふふ…えへへ、ぐふふ、ふふん」
「…俺のパンツそんなに可笑しい?」
「ひいっ!おばけ?」
「これでもおばけか」
「冷たいっ」


冷たい両手で頬をむにむにと挟んで揉まれ、ごめんなさいと直ぐに謝った。…いつの間に帰ってきたんだろう。


「とりあえずパンツ戻して」
「は、はい…べ、別に何もしてないからね?」
「うん、…良かったら今度買ってきて」


複雑そうにしてた新が、更に難しそうな顔をすれば頬を掻きながら俺に背を向けた。


「それからちょっとコンビニ行ってくるから、…ゆっくり行ってくるから」
「一緒に行こうか?」
「大丈夫」
「そう?行ってらっしゃい」


折角帰って来たのに早々と出て行ってしまった新。
自分の洗濯物だけでも片付けようと立ち上がれば、違和感が。

……俺の息子が凄い事になってる。
もしかして、新はこれを見て出て行ったんじゃ…それにしては可愛い反応だったなぁ…。…俺って変態なのかな。

…もう変態でいいや!
開き直ってパンツを拝借し、あの写メを見ながら新が帰ってくる前に落ち着かせたのだった。


ーーー


「俺のパンツ知らない?」
「こ、今度買ってくるから」
「…うん」


何に使われたのかも知らず、そんなにダサかったのかと、密かにショックを受けていた新なのだった。


end

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