ぶっく

□非リア獣
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カタカタカタ…とキーボードを叩くも、別に自分が書き込んだりはしてない。唯のネットサーフィンだ。

今日は12月24日、終業式。他に意味はない。

煌びやかな街頭、流れる楽し気な音楽。そんな中赤い帽子を被って寒空の下働いてる人もいるんだ。家でのんびり過ごせるだけマシである。

外に出れば弱点である獣耳を曝け出し道を歩く人々。別に妬む必要もない、勝手にやっててくれればいい。俺には関係ないこと。

ただ、そんな俺がサンタに願い事をするのはやっぱり少し狡いか。…せめてチキンだけでも食うか、それに意味があるのかわかんないけど。

今日だって本当は午前で終了なのに、家に帰ってきたのは五時だ。
今に始まったことじゃないけど、虐めとかでもないけどいつも用事ごとを押し付けられてしまう。

元々だったのか、癖になってしまったのか。今では言われなくても雑用に回ってしまう。

例えで言うなら朝から友達を起こしに行き、学校につけば日誌を取りに行かされ、間違いだらけの宿題をクラスメイトに写され、体育があるなら用具の準備と片付け。放課後は毎回誰かの代わりで毎日掃除。
今日なんて彼女を呼ぶからとだらしなく獣耳を曝け出した友達の部屋を片付け…それを三件も繰り返したのだ。せてめお母さんにでも頼んでくれよ。

友達なんていらない、ともなれず日々悶々と過ごすせいか、俺は生まれてこの方獣耳を生やした事がない。

俺達の種族はプラスの感情、テンションの高まりや興奮、または恥ずかしさ。
それが一定値を超えると獣耳と尻尾が出てしまうのだ。
だからそれが出ている時は機嫌がいいって目に見えてわかる。オマケにそこは弱点にもなり、触れられると気持ちいいんだって。…出たことないからネット情報だけど。

獣耳の種類はメジャーな犬、猫〜鳥や魚類もあるらしい。
大体は同じ種族同士がくっつくらしい。…まぁ、犬猫とかならともかく、魚類が犬を魅力的に思えるかって話。やはり同じ物同士に魅力を感じるんだって。

俺の親は犬族だから、多分俺も犬らしい。…だからこんなコケに使われるのか、いや犬にも用事ごとを押し付けられてるけど。

はぁ…と溜め息を尽きながら見ていたページを閉じる。こんなページ改めて今見るんじゃなかった。
異種同士は禁忌だとか、異種が一度交われば他と恋愛出来ないだとか小さく書かれていたけど、俺には無縁な話。

晩ご飯は肉を焼き、寝る前に枕元に一枚のメモを。

”サンタさん、誰からか一人でいいので優しくされたいです。”

ホントにサンタがいれば笑顔も引き攣るレベル。
そんな悲痛なメッセージを書き置き、眠りに落ちたのだった。
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