ぶっく

□かわいいリアンちゃん
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「リアンちゃーん!ふうせんちょーだいっ!」


駆け寄ってきて、オマケに飛びつくという名のタックルをかます笑顔満開な小さな子供を何とか片手で受け止め、その背中をぽんぽんと撫でる

一度離れた子供にこっちが喜んでいる事をアピールをように手足やお尻をオーバーに動かす
そして一つ風船を渡せば笑顔で親の元へと駆けて行くその子を、狭い視野から見つめ手を振り返した


「リアンちゃん、リアンちゃん」


背中側から微かに伝わった感触に、はいはいと答えるように振り返って首を大きく傾げる

何か言いたそうにするも、もじもじとするばかりで言葉が出て来ない様子に、また一つ風船を差し出す。

そして嬉しそうに笑顔を向けてくれた子供は親が待っている自転車の所へ駆けていく


特別子供が大好き、って訳じゃないけど、あんな笑顔を俺に向けてくれるのはやっぱり嬉しくて
俺でも誰かを喜ばせられるのが嬉しくて

頭にはどこかの猫がつけてそうなドットの赤いリボン
嫌味のない白地のワンピース、その裾に赤いラインの入っている
それにローファーモチーフの黒い靴

この”ハムスターのリアンちゃん”の着ぐるみを着たバイトは俺には向いているみたいで、やりがいも感じていた


ちなみにこの服はスーパーの服売り場に子供用と大人用サイズでも売られており、そこそこ人気みたい


ーーー


「今月の目標はーー」


「生徒会長かっこいいーっ」


周りの女子達は口々に感想を漏らし、校長先生の話の何百倍くらい集中して彼の話に耳を傾ける

仕方ないけど、さ…

そう呆れているのは俺だけではなく、たまらず欠伸もする男子もちらほら

女子の視線を釘ずけにしているのは、壇上に立っている生徒会長の津坂(つさか)会長だ
耳に心地良く通る声に一際輝いている雰囲気。まるで周りのライトは彼だけを照らしてるようだ
男なのに柔らかそうな髪は寝癖の一つもない
目鼻立ちも整ってる上に、背も高く足だって長い

魅入ってしまうのも仕方ない。…が、内容は真面目で面白味はない

どこかの男子の欠伸がうつったように、俺も手で覆うも大きく口を開けてしまった
そして直ぐに後頭部に衝撃が走る


「あいたっ」


「会長が話してるのに失礼だとは思わないの?ちょっとは見習いなさいよ」


「無理無理、元が違い過ぎるもん」


「あは、それもそうね」


冷ややかな視線に馬鹿にするかの様な話し方
たまに話し掛けられたと思ったらいつもこんな感じだ

クスクスと笑う女子達に先生が咳払いをし、また静かな空間に戻っていく


女子達の言ってたことは、あながち嘘でもない

腫れぼったい一重まぶたな上に三白眼で目付きは悪く見られる
整ってるパーツなんかない上に、平均的な身長も、平均的な体重もない
ひょろい、モヤシと呼ばれても仕方ない容姿。故に雑に扱われるのは日常茶飯事だ

悔しいとか、辛いとか、そんな事はもう思わない。それが身を守る為だ、聞き流してないと精神的にやられてしまう
だからただ眠い…それだけ、後は早く朝会が終わってほしい

着ぐるみを着ていると時と正反対な学園生活を送っているな…、とぼんやりとする頭で考えていた
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