ぶっく

□いい関係
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「せーんぱーい…」


「市川、ここがどこだが分かってるのか?」


「スる時は名前で呼んでくださって言ってるじゃないですか。ほら、直(すなお)さーん」


「…っ、捕まっても弁解してやらないからな」


名前名前とせがんでくる相手に、吐息に混じりに呼んでやればその手は早まりベルトを外し始めてしまう


「お、おい…」


「こう言うのってドキドキしますね」


…その顔のどこがドキドキだよ。むしろルンルンじゃねーかよ…

朝の通勤ラッシュ、混み合う電車内の隅
無駄に背の高い恋人の市川流(いちかわ ながれ)に背後から抱きすくめられ…匂いを嗅がれながら下半身を押し付けられていた

軽く振り返れば、その緩んだ頬を軽く引っ張ってやる
しかしその手は握られ、彼の下半身へと導かれていく


「触るならこっちでお願いします」


「…触ってやったら、俺に触るのやめるか?」


答えはノーだと言いた気に、自身を扱く手が速められていく
壁に手を着き自然と前屈みになってしまえば、何を勘違いしたのか嬉しそうにズボンを膝まで降ろしてしまう

…そして手にも、下着越しの尻にも生暖かい物が当たり冷や汗が流れた


「ま、待てって、流石に不味い」


「ちょっとだけ、ちょっとだけですって」


そういい下着の中に入り込んだそれは、後孔や睾丸を摩っていく
腰を引けばぎゅっと抱き締められ、無遠慮に腰が揺らされる


「はぁ…きもちい…直さん好きです。すき」


「も…馬鹿野郎…っ、昨日もシたのにこんなところで…くっ」


「あれで足りる訳ないじゃないですかー。俺先輩より若いですし?」


ガタンガタンと揺れる電車
それに合わせて器用に流も揺れ、周りからは不審な目で見られない

一方こっちは下着は丸出しな上に自身だって恥ずかしい程立たせてしまっている
こんな姿、いくら流が盾になってるからとはいえ、ちらりとでも見られたら終わりだ
声を出さない様に必死に唇を噛み締め、なるべく感じないように他の事を考える

だがそんな事は彼には関係なく、むしろ声が聞きたそうに耳を甘噛み首筋にキスを落とす
下半身だってもっとと強請るように、いきり立つ先端が入り口に何度も擦り付けられてしまう
何とか腰をズラす姿を、彼はまた楽しそうに眺めていた

そんな時、ガタリと大きく車体が揺れた


「…〜っ、な、流…早く抜けっ」


「む、無理ですって、う…イきそ…っ」


慣らされてもいないそこへ、大き過ぎる物が揺れた弾みで一気に奥深くまで挿入されてしまった

わざとだろ…くそ…っ


「あ…くっ、う…はぁ…」


「へへ…いつもよりキツいですよ。直さんも興奮しちゃってるんですね」


それはお前だろ、と声を出せるなら大声で怒鳴りつけてやりたい
いつもよりも大きな物が、余裕が無いのか乱暴に抜き差しされていく
そして程なくして、二人同時に熱を吐き出した


「おい…、中に出すな…っ」


「こんなとこで外に出せませんって」


出し切るように尚も腰を揺らさせ、びくりびくりと情けなく肩が震えてしまう
ご機嫌な彼は自身を引き抜きズボンを直し、俺のズボンも引き上げベルトも締めてくれた

そしてアナウンスは、ちょうど降りる駅を知らせた


「えへへ、これで今日一日頑張れそうです!」


手を握られ引かれるように駅へと出れば、向けられた笑顔にちらりと手首の時計を確認する


「ほー…それは良かったなぁ。俺はちょっと、朝から指導が入ってて気が重い」


「えーっ、誰ですか?新人のカレですか?…羨ましいなぁ」


怒ったかと思えばしゅんと眉を下げ情けない顔の彼のネクタイを掴めば、振り返ることなく引っ張り車椅子専用のトイレへと連れ込む


「せ、先輩…?一緒にトイレとか、嬉しいような恥ずかしいような…」


「お約束事項、その一」


声のトーンが変わった俺に、彼は背筋を伸ばした


「は、はいっ、先輩には…外で手を出さない」


「守れなかった場合は?」


「どんな罰でも受ける…」


突き放すようにネクタイを離してやれば、便座へと座り込んだ相手に自分のネクタイを緩める

わなわなと震える長身の彼を見下ろし、にっと広角を上げた


「俺よりずーっと若いんだから、大丈夫だよな?」



ーーー


市川流、俺の恋人はとにかく手が早かった
恋人になったのだって、体が繋がってからだ
スキンシップの多い奴だと思って接していれば、それはいつの間にかセクハラへと変わり、今や所構わず襲ってくる

何で男の俺を好きになったのかはわからないが、入社してきた頃から面倒を見てきているから…まぁ、可愛くはある
薄い毛色やだらし無い、今の言葉で言うとチャラい感じは好感が持てないが、あの人懐っこさは嫌いじゃない

健気な姿に恋人になることを承諾したものの、歳も離れた男の…性欲の強い相手に苦戦はしていた



「二人だけで出張とか、楽しみですね?」


「仕事で行くんだからな、頼むから浮ついてヘマだけはするなよ」


「分かってますって。でも結構時間取れそうですし、観光出来そうですね」


「商談が上手く行ったらな」


窓を開けば心地いい潮風が車内へと吹き込む

高速を乗り継いでやってきたのは、商談先の会社だ
到着後、自身の身なりを整えれば彼のネクタイも締め上げる
受け付けを済ませれば共にエレベーターへと乗り込んだ

その時に、すっとスラックス越しの尻が撫でられた
そして語り掛けられる言葉も、甘い音色だった


「ねぇ先輩、もしこの商談がこちらに条件も良くて、早く済んだら…ご褒美くれますか?」


「ふ、そんなもん出来るならやってみろ。この商談まで来るのだって大変だったんだからな」


ぺちん、とその手を払えば今度は背後から抱き締められてしまう


「知ってますよー、ずっと先輩のこと見てましたから。…もしヘマしたら俺が一から商談取ってきますから、今日は俺に任せてもらえませんか?」


「…そこまで言うなら、任せる」


「ふふ、ありがとうございます。ご褒美、何してもらおっかなー」


どうせ無理か、途中でフォローを入れるしかないだろうな
無理に引き離すことなく、降りる階になれば自然と離れる彼。そして先を歩いていく


いつになく背筋の伸びた彼の後ろ姿に、どことなく頼り甲斐を感じてしまった
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