ぶっく

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sideー麗希


賢い僕は奏からの愛の薄さには気付けたけど
どうして僕みたいな完璧な人間を愛せないんだ?

愛を囁いてはこなかったが、見た目も家柄も、声や振る舞いだって完璧な僕に惚れない訳がない

だとするとやはり照れ隠し…ではないか。うーん、本当に最近奏のことばかり考えてしまい、他のこのが手に付かない


「せ、先輩…授業…始まってますけど…」


「ああ、気にしないでくれ。許可はとってある」


腕の中の奏を抱き締め、首筋に顔を埋めればその匂いを堪能する
女から漂う香水や甘いシャンプーの匂いは一切ない。あるのはほんのりと香る石鹸とシャツからの安物の洗剤の香りだけ

離れてる時間が惜しく一緒にいたいと誘ったのに、授業に出るからと断られてしまった
なら僕も一緒に出る他ないだろう?
勉強は家庭教師がついているし、どの道このままでは集中出来ない


「ひ…っ、麗希先輩…当たって…」


愛する人が目の前にいるのだから、勃ってしまうのは僕を惑わす奏のせい。傍にいるだけで満足な僕に意識させるようなそんな言葉を言うのなら、後でたっぷりと愛し合おうではないか

愛が薄いとはいえ、反応は抜群に良い。声だって僕を惑わす甘美な音色だ
結果はともあれ気も遣ってくれているようだから、嫌われてるなんてことはありえない

男と男だからと気にしているのかもしれないが、それも一瞬のこと
この僕が何の取り柄のない奏に惹かれているんだ。奏だって同じになるはずだろ?
それにあんなに乱れ愛し合ったのだから、いくら奥ゆかしいといえ、もう気にならなくなっているだろう

じゃー何故奏は僕に愛の言葉を囁かない?


また答えに行き着かず、堂々巡り


ああ、これは神に与えられた試練なのか
あまりにも愛される僕に、人を愛する気持ちを学ばせる機会
与えられ続けていた僕に、ゼロからのスタートを体験させたいのであろう。まぁ、あっちの相性は始めから適してしまっていたから実質ゼロではないが、何でも出来てしまう僕故そこは仕方あるまい
そして試練を乗り越えた先…奏から愛を囁かれた日には、僕は人間として大きな成長を遂げる
そして奏からは笑顔と共に愛の言葉が…。奏のことだから腰は触れないだろうが、きっと恥じらいながら甘えてくるはずだ
いつもより甘い、あの声で…。あー、想像しただけでたまらない


「奏、放課後出掛けるから。土日は帰れないってご両親に連絡して」


おどおどとするばかりで中々返事を返さない。返す言葉を迷っているのだろうか?
ああ…悩んでいるんだね。大人しい君のことだ、立て続けに外泊だなんて…それにその先の事も考えてしまってるのかもしれない

いずれ何かしらの形で正式に結ばれる、愛し合う者同士なのだから必然的にしてしまう行為だと。決してふしだらな行為ではないと後で教えてあげなければ

そうだな、年齢的にも奏の方が下だ。僕が沢山のことを教えてあげなければいけない
何でも出来すぎてしまう僕への試練なのだから、相手は僕と反対な無知で控え目な奏なのかもしれない
似た物同士は気が合うかもしれないけど、その分喧嘩もしやすい
むしろ凸凹のように互いに無い物を持ちあっている方が伴侶に向いていると聞いたことがある


神は乗り越えられる試練しか与えない
ならばどんな試練も乗り越えてみせようじゃないか
一つずつ乗り越えていき、それが二人の絆を深めていくだなんてロマンチックじゃないか
奏の為なら何だってしてあげるよ

ああ、その前に昼休みは倉庫に篭ろうか


「奏、愛してるよ。後で始めて愛し合った場所へ行こう」



end
 

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