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「俺との喧嘩に巻き込まれ負傷、治療の為隔離。怪我を負わせた俺自身が面倒を見るって事にしておいた。だから気が済むまで居ればいい」
この治療には精神的回復も含まれる為、別寮に行けたらしい
あれから部屋に帰り、簡単に荷物を纏め鞄に詰めれば帝王が迎えに来てくれたのだ
頭を下げながら別寮までくれば、帝王も一緒に部屋へ
決して広くはない部屋で帝王は椅子へ、俺はベッドへと腰掛けた
そして帝王がここに隔離する理由を教えてくれた
「本当にありがとうございます」
でもその理由じゃ帝王に迷惑が掛かるんじゃ、と遠慮がちに尋ねてみたが何ら問題ないらしい
男子高なだけあって喧嘩は日常茶飯事と言っても過言ではないらしく、報告するだけマシならしい
自然と仲直りするものからグループを作り乱闘する人達までいるらしく、そうなれば生徒会が、主にそうなる前に帝王が嗅ぎ付けて鎮めるらしく、別寮で課題など与えて反省させる
だから退学者はすくないのだとか
藤崎が来るまで平和だ平和だとは思っていたけど、やはりそれは帝王のおかげで
縁のない話だったので驚いて聞き入ってしまった
「…っと悪い、愚痴り過ぎた。だからここに何日居ようが特別な事でもないから気にするな。…それよりも、だ」
俺が気にしてるのは帝王の事なんだけど…本当に優しい人…
話の腰を折るのも悪いので聞き返すは止めておいた
…後でちゃんとお礼をしよう
帝王の言葉に安心するも、長居する訳にもいかない
早い内にどうするべきか考えないと…
帝王がいるのに少し考え込んでしまい、ふと肩を叩かれる
見上げれば帝王は目の前におり、吃驚してしまったが何とか動揺を隠し見上げた
「脱げ」
「は…はい?」
い、今何て…?
困惑したまま首を傾げれば…目を逸らされてしまった
あ、あぁ…無意識とは言え俺がすれば気持ち悪い仕草をしてしまった…気をつけないと
「手当をするからだ」
「それは自分で…」
「一応報告書にも書かなければならない。…怪我の具合によっては医者も呼ぶ。だから俺は六宇の怪我を把握しなければならず、自己判断されれば困る」
「は、はい…すみません。すぐ脱ぎます」
ひぇ…恥ずかしがってないで迷惑掛けないようにさっさと脱がないと…っ
突き刺さる視線に気付く間もないままシャツのボタンを外していく
肌を晒すにつれて帝王の表情が固くなっていく
…あちこちに痣やら傷があるからだと思う
ズボンに手をかけながら…何だか申し訳なくなってくる
沈黙な中脱ぐのもあれなので、気まずい空気ながら口を開いた
「自分で出来る範囲はやりますので、届かない所はお願いしてもいいですか?」
「…ん」
パンツ一枚な姿で情けないが、男同士だし気にしても仕方ない
備え付けてある救急箱を手に取り、目立った痣には湿布を、傷は消毒してガーゼを当てていく
そう言えば今までどれだけ痛くても手当てなしてこなかったなぁ…なんて、ふと思い出す
そこに気が回らない程精根尽き果ててしまってたし、藤崎に見つかったら何言われるか分からなかったから仕方ないんだけど…
帝王のおかげで、精神的にも随分良くなった気がする
勿論優しくされたからって傷は治らないけど、何だかすぐに治ってしまいそうな気がした
「すみません、背中見てもらえますか?」
大方手当てが終わったので、お言葉に甘えさせてもらって帝王に背を向けた
特に痛くもないから平気だとは思うんだけど…
「…ぁっ、わっ、…え?て、帝王?」
触れられる事にも慣れてない上に素肌に、しかも背筋を撫でるように手を滑らされ…びくんと身体が跳ね上がり肩を竦ませる
触れられたかと思えばその広い胸に後ろから抱きすくめられ戸惑いが隠せない
「ここと、後ここも」
そう言って手を這わすのは腹や胸で、小さな切り傷がある場所
ほっといても治りそうな小さな傷だったので手当てしてなかった部分だ
わざわざそんな所まで見てくれてたなんて…
帝王の片手には塗り薬が握られており、薬を出し指に取れば塗り始めた
「ここも…痛かったろ」
「ひ…んっ、き、汚いですから舐めるのは…」
「こうした方が早く治る」
薬でぬるついた指が傷を撫でるから痛むのだけど…首筋や肩を舐められて恥ずかし過ぎて痛みが鈍ってくる