ブック2

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side―姉


「あ、宏武。どっか行くの?」


「ちょっとな」


「こ、こんにちはー」


「…ちは、ごゆっくり」


玄関先でばたりと宏武とご対面
どこか機嫌が良さそうで、私の友達にも言葉はぶっきらぼうなものの、うっすらと笑みを向けて出て行った


「格好いいーっ、初めて返事してもらえたよっ」


「あー…最近丸くなったからねぇ」


だから宏武がいる時でも物を貸すとかちょっとした事でも友達呼べるようになったんだよね
もしすれ違う事でもあったら睨み付けてその眼力で友達泣かすし…それでも格好いいから会いたがる子は絶えなかったんだけど

それもこれも泉のおかげで、ぐるっと一周回って丸くなって…たまに犬に見えてくる

ゆさゆさと揺さぶってくる友達を宥めれば部屋へと上がってもらった



―――



何があったか知らないけど、いつの間にか静香が泉だとバレてしまっていた

大学にうちの弟が来てたとか聞いたから多分宏武なりに必死に探してたんだと思う

一応宏武に怒鳴られたが、怒鳴られてる最中に泉が家に来て…その怒りもどこへやら、犬のように駆けて行ってしまった

そう、宏武は以前よりあからさまに泉にでれでれしているのよ

丸くなってくれたのは勿論嬉しいし、女嫌いも直って、おまけに泉とも仲悪くならなかったなんてこれ以上良いことはないんだけど…ただちょっと変な予感が

…たまに隣の部屋から変な声も聞こえるし


でもまさかそんな、ね?
いくら泉が女装したからって…

そもそも泉もだけど、宏武が女嫌いだったから二人に女の子が寄って来なかったからさ
女嫌いが直って二人でダブルデートなんかを仲睦まじくやってくれたらなーって、私なりに思ってたのよ?

…まぁまだ二人とも高校生だし、私の気が早いだけよね


遊びに来た友達を見送り、この間撮った泉の写真を見ながらそんな事を考えていれば、隣の部屋からガタっと物音が


「宏武?」


あれ?でも玄関から物音はしてなかったし……え、まさか泥棒?
母さん達は留守でいないし…ど、どうしよう…

武器になりそうな棒を手に取れば、そうっと部屋を開き宏武の部屋へ
入る前に扉に耳を当ててみれば


「ふ…ん…うぅっ」


や、やっぱり誰かいるっ
棒を握る手に力を込めれば、相手の隙をつく為にそうっと扉を開いた


…そして目の前の光景に握っていた棒がころんっと、手から滑り落ち転がっていった



―――



「お…お粗末なものをお見せしまして…」


「大丈夫だから、とりあえず落ち着こっか」


衝撃的な物を見せられてこっちも動揺してるんだけど、あまりにも泉が、もう死にそうな程動揺して恥ずかしがっているから妙に頭が冴えてくる


「泉の裸とかよく見てたしさ、そんなに恥ずかしがらなくても、ね?」


「でも手錠されて口も塞がれて、裸な上に尻にバイブ突っ込まれる姿なんて見せた事なかったよっ」


「い、泉落ち着いて、大変な事を口走ってるから気付いて」


そう告げればばっと口元を手で覆う泉
…もう半泣き…いや肩震えてるから軽く泣いてしまってると思う

…分かるよ、外見とかじゃなくて泉のこう言う反応が滅茶苦茶可愛いのは。何たって姉弟だし

さっきも思ったけど、…まぁとりあえず二人の仲については今は隣に置いておくとして


………まさか宏武がこんなに変態だったなんて、思いもしなかったし知りたくなかったよ


殆ど何も見てないから、と泉に言い聞かせ、何とか落ち着かせた
事情を聞けば宏武の誘いを断ったからああなって放置プレイされてたらしい、そこは恥ずかしがらず男らしく白状した泉
私の方が聞いてて恥ずかしくなってくる


「別に全部断ってる訳じゃなくて、誰もいなかったら俺だって嫌がらないし。…でも最近時間合わなくて、断ったらお仕置きとか言って縛られて、それでも駄目だっていい続けたら宏武があのまま出て行ってさ…」


「わ、分かったから、…何かごめん」


自分がとんでもない事言ってるのに気付いて泉っ、私は別にあんた達の恋愛事情を把握してる訳じゃないんだから!

もう…うちの馬鹿が泉に意地悪したのは痛い程よく分かった。聞く限り泉は悪くない

…となればあの馬鹿を懲らしめるしかない
ぱっと閃いた案だけど、宏武に我慢を覚えさすにはちょうどいい


「泉、ちょっと宏武に仕返しよっか」


手招きすれば寄ってきた泉にその仕返しを伝えた



side―姉end
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