ブック2

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放課後
本来なら今日も一緒に勉強するはず…だったんだけど
それが中止になり友達の聖と一緒に帰宅する事に


「ごめんっ、本当にごめん…」


「いいよいいよ。残念だけどそう言う事なら仕方ないしね」


「でもせっかく一緒に勉強してくれてたのに…」


…結局、俺の意地なんかちっぽけなもので
旅行から帰ってきた親も女装で通う事を勧めてくるぐらいで
女装なら女の子に悪さ出来ないだろうし、悪目立ちもしないだとか
後は姉ちゃんが行ってたから学費も安くなるとか、…色々言われたんたんだけど真剣に聞いてられる心境じゃなかったからあんまり覚えてない

進路先を変えざるおえなくなり、先日姉ちゃんの高校に試験を受けに行ったのだ。…姉ちゃんの中学の制服を借りて

試験を受けるまで聖に言えなかったのは…まだほんのちょっとだけ、黙って男子高を受けようと言う気持ちがあったから…
現実味のない話しだし、受かってからでも親さえ説得すればって思ってて…
…だけど試験後に保健室に連れ込まれてしまい、そんな気さえなくなってしまった


もう聖と同じ所を受けれないのが確定してしまったので、それを女装の事とか…言えない事を除いて伝えた


「試験はどうだったの?」


「聖のおかげで、言ってくれてた所が殆ど出たから大丈夫だと思う」


「ならお互い無駄じゃなかったね。俺も謙に教えてもらった所沢山あったから、一緒に勉強出来て良かったよ」


試験問題は本当に、聖のおかげで何とかなったんだけど…
鬘がズレてバレました、なんて事にならないようにって、元からこのままの髪で行けって…
試験よりバレないかの方が心配で気が気じゃなくって…
俺と同じくらいの髪の子とかもいたけど、やっぱり雰囲気が違うって言うか…

なんて、回想に浸り憂う俺に屈託のない笑みを向けてくれる聖
今はそれが眩しく見える


「俺もそっち一本にすれば良かったかな…そうすれば一緒にいれるし残りの2〜3ヶ月謙と遊び放題でしょ?」


「だ、駄目っ!聖はちゃんと千須川高校に入って!」


聖の言葉にぎょっとし、思わず声を張り上げてしまう
青ざめる俺を聖はぽかんと見つめた


「…どうしたの謙。そこだって千須川とあまり変わらないよ?俺も私立は――」


「聖は賢いんだから第一志望受けて、絶対受かるんだからっ」


「分かったから落ち着いて。ありがとう」


聖の言葉を遮ってまで発言するも、まともに喋れてない自覚もあり、穏やかに宥められれば気恥ずかしくなってくる
何だかやるせなくて…俯いてしまう


「…そんな顔しないで?進学先が違ったって、一生会えなくなる訳じゃないんだから」


「分かってる…けど…」


誰にでも優しい聖なら高校に行ってもすぐに友達を作るだろうし…男子高だから余計に友達増えると思う
今はそう言ってくれてるだけで、俺なんかきっとすぐに忘れられて縁が切れてしまう
片やこっちは女装して通わされるんだから…友達なんか出来っこない
聖にすがりついたりとか、みっともないからしたくないけど…本当にやるせない


「ほら、せっかく試験も終わったんだから今日は遊ぶよ?」


「え、でも聖は…」


「息抜きだって。それとも何か用事ある?」


その言葉に首を横に振る


「聖がいいなら遊びたい」


「じゃー決定。でも良かった、最近元気が無かったから心配だったんだ」


その言葉に又も固まってしまう
…本当は「心配させてごめん」だとか「何でもないよ」とか言いたかったんだけど、元気が無いのに気付かれた事に冷や汗が流れる

「べ、勉強し過ぎたからかな…」なんて苦笑いで返し、これから何して遊ぶか、何のゲームするだとかの話題にすぐ話を逸らした
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