ブック2

□キミの悩み事は何?
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''可愛い‼︎”
”ホントに女の子みたいっ”

今回も可愛かったけど、次も期待してます…か

…えへへ、ここの人達は優しいなぁ
全てのコメントを読み終えれば、パソコンの電源を落とした

んーと腕を上にあげ体を伸ばしながら、来週はどんな服を着よっかな…っと悩む

最近普通の服ばかりだったから、たまにはコスプレでもいいかも…雪ちゃんに何か貸してもらおっかな
あ、一緒に写真撮るのもいいかも

それで一緒におでかけとか……やっ、やっぱりまだ俺には無理だっ
…とりあえず雪ちゃんにいつ遊べるか聞いておこう
そう思って今度は携帯をいじる

要件を送信すれば五分しない内に返信が返ってきた
週末に遊ぶ事が決まり、もう今から楽しみで…日頃のストレスなんか吹き飛んでしまっていた



ーーー


ドンッ


「あ、ごめん。見えなかった」


ドカッ


「あぁもう邪魔っ!何でこんなとこにいるのっ」


バンッ


「あれ、居たの?」


…これが俺の日常、故にもう怒りや悲しみは湧いてこない。慣れてしまったから
でも痛みは慣れず、尻餅ついてしまった尻はじんじんと痛む

俺はびっくりするほど存在感が薄い
潜在的なものもあるとは思うけど、その理由は馬鹿でもなければ賢くもない、強いて言うなら鈍臭い…
肌は焼けると痛い上に元から白い、かと言ってそれを生かせる容姿でもない。可もなく不可もない顔
おまけに両親に似て身長が小さい…下手すれば女子にも負けてしまう
元気よく発言なんかする心強さも持っておらず、ひっそり普通に学校生活を送っている

…だから友達以外には中々覚えてもらえてない
クラスメートからもあまり認識されておらず、前から回ってくるプリントが最後尾の俺まで回ってこない…もう多分先生にも覚えられてないし、いる事に気付いてもらってない
無遅刻無欠席で登校していたのに、一学期の通知表には遅刻や中抜け、欠席までもありその日数は軽く十を超えていた。もちろんちゃんとどの教科も出席の時には少し大きな声で返事をしていたのに…

歩けば誰かにぶつかり、体育は存在に気付いてもらってないので良かれと思って動いても誰かの妨げになり邪魔扱いされ、前の人に並んで歩いていればピシャリと目の前で扉が閉められる

…でも皆に悪意はなく、虐められてる訳でもない。むしろ虐めの対象になる程の存在感もない

空気、それが俺を表すのに一番近い
空気なら必要じゃないか、ってなるけど、必要なのは新鮮で美味しい空気で
俺は山頂の空気ではなく地下とか、今吸い込んだ空気ではなく吐き出した側の空気。つまり必要かと聞かれれば微妙なのだ


でも、そんな俺でも唯一誇れる時があって…それがネットの中。及びそこから出会った人達と一緒にいる時だ


「千春は女の子みたいで可愛いねぇ……でも顔だけがおしいのよ」


そう親戚中から言われて育ってきた
小学校の頃まで女の子の服もよく着せられていたのだ

それを今でも着こなせるものなのかなって…一度試しにお姉ちゃんのを着てみれば何と言うか…多分女の子として通じるんじゃないかって…顔以外は、だけど

最近テレビとかニュースで”男の娘"と言う女装した男の人が流行っているのを聞き、試しに調べてみれば女の子より可愛い男の人なんかもいて
ブログをやってる人も多くて…俺もそれを真似てみて、サイトを作ったのだ
流石にネットの中だし…自信も皆無だったから顔から下だけの写真と一言二言感想とか書いてたんだけど…結構見てくれる人が多くて
まぁ、良い感想ばかりでもなかったけど、そこから仲良くなった男の娘友達なんかも出来ちゃったりして…その中で一番仲がいいのが雪ちゃん
実際ネットから会ったのは雪ちゃんだけで、後の男の娘友達は雪ちゃんから紹介してもらった

初めはただ女の子の服を着ていただけだったのに、今や色々レクチャーされ産毛さえも剃ったり化粧をするようになったり…貰い物ばかりだった化粧道具ももう自分で買い集めている
…見せる機会は殆どないんだけどね
洋服だってちょこちょこっと自分で買い始めている

学校や家族には言えない隠れた趣味なんだけど、…空気扱いされない女装は楽しくて充実していた
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