ブック2

□不器用な恋愛
1ページ/2ページ





「は、はい…どうぞ…」


寝坊するのが得意と言っていいほど、二度寝も好きな僕が恐怖心に狩られて目覚めたのは五時である

何とか形になった、隙間なくおかずを詰めた弁当を赤髪の彼に差し出した

包みを開き蓋を開け、一口食べた後…こちらに視線が


「ひっ、ごめんなさいごめんなさい…っ」


「まだ何も言ってねーだろ、うめーよ。さんきゅ」


「そ、それは良かったです…」


眠いまなこを擦りながら、彼に渡した弁当より半分程小さな、自分の弁当を開けばおかず口へと運ぶ

…不味くはないけど

微妙としか言えない弁当を毎日作らされるのは、やはり虐めなのだろうか

眠い…今すぐ寝たい

そればかりが頭をしめる
一緒に昼食を取るも会話はなく、距離も近くはない

ふと彼が箸を止めて腰を上げた
そして僕の隣へと座り込む


「…お前は俺の何だ?」


「パシリです…ひっ」


「ちげーだろ、何回教えりゃ分かるんだよ」


彼の目力が半端なく、僕は睨まれるだけで毎回ちびりそうになってしまう

おまけに肩を叩かれ猫背な背筋も伸びる


「おら、さっさと言え」


「こ、恋人…です?」


「…それから?」


「たっくんがダイスキ、デス」


感情がこもってない為不服そうではあったが、頭を撫でら彼はまた弁当へと箸を伸ばした


こんな、虐めか何なのか分からない交際が、今日で三ヶ月目なのである


ーーー


きっかけは何だったんだろうか
でもきっかけなんてないんだと思う

小学校で経験したように、理由のないまま虐めの標的になりはぶられるなんてよくあった

虐められる光景も見たことがあったが、やはり特別な理由があったわけでもない

多分、これと言ったきっかけはなくて、僕の何かが彼の目に付いたんだろう

…暗いとか、パシリやすそうとか

気付いたら今の形が出来上がっていて、打開策や突破口なんて見つけられていない
ただ、彼が飽きるのを待つばかりである
虐めも遊びも、飽きがくれば、これもきっかけがないまま終わりを迎える
それを知っているから、そこまでしんどくもなかった
幸い彼は僕に金銭を要求したり暴力を使ったりはしない
それが救いである

嫌いじゃ…ないんだけどね

何と無く、この恋人ごっこの何が楽しいのかは分からなかったが、優しくしてもらってる自覚はあった

直接何かをしてもらったりはないけど、飼育委員な僕の大好きなこの兎小屋
前はゴミを投げ入れられたり、兎に紙とか食べさそうとしてる人達がいたけど、今はそんな事をしてる人はいない

兎の水を汲みに行った時に偶々見たんだけど、彼が注意してくれたみたいで

…まぁ、注意ってレベルじゃなかったんだけど

お陰様で、委員の人達までよりつかなったけど、だから僕はそんな彼が嫌いではなかった

…嫌いじゃないけど、今日の放課後…デートか…

朝に料理で出た野菜の切端しを差し出せば群がってくる兎達に、暫し癒され放課後への力を分けてもらうのであった
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ