ブック2
□情けは人の為ならず
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sideー愛羅(あいら)
「水道管が破裂しただぁ?」
朝早くから鬼の様に掛かってきた電話
寝起きの悪い流石の俺でも目が覚め、渋々ながらも電話を手に取れば…何やら昨日から同僚と飲んでいたらしい友人からで
…記憶にはないが朝起きたら水道管が破裂してたとか、直そうとして更にぶっ壊したとか
友人は焦っているのだが、後ろにいるっぽい同僚の人達は「家がプールみたいだ」と言う笑い声が聞こえる
「俺は修理の間 誰かの家に転がりこむつもりなんだけど…下の階まで水がーー」
…要約すれば派手に壊すは床とか家具がめちゃくちゃらしく
修繕費やら何やら考えればお金がそんなになく、下の階の人を修理の間泊まらずホテル代さえ惜しいらしい
ちなみに下の階の人は優しかったようで、泊まれさえすればどこでもいいんだとか
「頼む!一生のお願いっ。後で絶対埋め合わせするから!」
「…いいよ、困った時はお互い様だし」
…あんまり迷惑かけた覚えはないんだけど、むしろこれで一生のお願い使われるの20回目くらいなだけど
幸い俺のアパートは家賃が安かった上に部屋数もあるから一人くらい来ても平気だ
ただ少し駅から遠くて不便なくらいで、後はスーパーとかも近いから満足している
見知らぬ人と暮らすなんて、とも思うが、友人から聞くからして怒ってもないようでかなり優しそうだし、数日の事だ
寝に帰ってきてるようなもんだから、そんなに接する時間も少ないだろう
…最悪残業してくるか飲んで帰ってくればほぼ会わずに済むだろうし
一応貴重品だけはしまっておくかな…と安易な気持ちで承諾したのが、まさかあんな事になるなんて…本当に夢にも思っていなかった
ーーー
「こんにちは〜」
「お世話になります」
…今から、後三十分後くらいに来るとしか聞いてなく、色々聞く間もなく電話は切れてしまった
頷いたものの女の子だったらどうしよう、とインターフォンが鳴った瞬間に気付き、緊張しながら扉を開けば…あどけなさの残る、同じ顔を持つ二人が立っていた
失礼ながら決して可愛い訳じゃない二人を前に、だらしのなくなる口元を覆い隠し、馬鹿みたいに赤面してしまった
「…あのー、愛羅さんで合ってます?」
「もしかして間違っちゃった?」
二人して同じ様に首を傾げる姿に慌てて取り繕う
「あ、合ってます合ってますっ。ど…どんな人が来るか聞いてなかったから、ごめんね?」
「あ〜急に知らない人が来たらびっくりだもんね」
「しかも双子だしね」
「なるべく邪魔にならないように過ごしますから」
「少しの間、お世話になります」
流石双子と言うべきか、息ぴったりで流れるように言葉を続けられる
それがまるで綺麗な音色でも聞いている気分で
頭を下げてきた二人にろくに出迎える言葉を返せないまま、情けなくもつられるように頭を下げて二人を家へと通した