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「竜兄…て、手を…」


「離すと迷子になるだろ?」


俺もうそんな子供じゃないんだけど…
しかも指を絡ませて繋ぐのって変じゃないのかな…竜兄格好良いから余計に周りから見られてるんだけど…気にならないのかな
…意識してる俺が変なのかな

竜兄とは昔から手を繋いでるから、今更な気はするけど
手を軽く握り返してみれば嬉しそうに笑みを向けられ、何も言えなくなってしまった


手を繋いだまま連れて来られたのは近くのショッピングモール

姉ちゃんにプレゼントをしたいから選ぶのを手伝ってほしいって言われたんだけど…


「な、何で俺に服あてがうの?」


「背丈が柚菜に似てるし、謙に似合うなら柚菜にも似合うだろ?」


「そうなの…かな」


全ては姉ちゃんの為だって言う妙な説得力があり、下手に嫌がれなくなってしまう
でも男二人が女物の服なんか見てたら怪しまれるんじゃ…
そんな心配を察してくれたのか、ぐっと竜兄に肩を引き寄せられる


「大丈夫、謙可愛いから。最近髪も伸びてきたし、変に見られないよ」


「…可愛くないし、嬉しくないよ竜兄」


そりゃ、竜兄より小さいけど顔はいたって普通で可愛くなんかないし、髪も伸びてきたからと言っても誰がどう見ても俺は男だ
散髪にも行きたいのに何か予定入って行けなくて…そもそも可愛いって言われても嬉しくないし、何の解決にもなってない
伸びてきた毛先を忌まわしく弄っていれば、竜兄が髪にキスを落とした
そして頬を緩ませて微笑む


「謙は可愛いよ、女の子よりも何倍も可愛い。そんなに周りの目が気になるなら着替えればいいよ」


「か、可愛くないったら、ちょっと待って…っ」


女の子なら、男の俺でも惚れてしまいそうな程甘く囁かれ、顔が熱くなる
昔から言われてはいるけど、毎回こう…口説かれてるような、自分が特別扱いされてるような錯覚に陥ってしまう
それほど、さらっと甘い言葉を言ってくる竜兄
それは俺の勘違いで、竜兄は俺を子供扱いしてるだけだと思うけど、何歳になっても慣れない…


引っ張られるままに試着室へと連れて行かれれば、服と一緒に押し込まれた

勿論、俺の手にあるのはさっき見ていた女物の服


「…え、や…こんなの着れないよ竜兄っ」


「着てくれたらプレゼント選びにも集中出来るだろ?それに着てくれた方がイメージし易いしさ」


だからと言って女物の服を着る勇気はない。余計に周りの目が気になって集中出来なくなるだろうし…
でも俺が駄々こねてたら竜兄がプレゼント選べなくなる…


「ちゃんと選ぶからこれは…」


「着てくれたら俺だって選びやすいから、な?頼むよ謙」


竜兄だって男二人で女物の服選ぶより女の子と選んだ方が見やすいだろうけど、いやでも俺が鬘もないのに着替えたところで…

あーっ、これは姉ちゃんのため
これは姉ちゃんのためっ、竜兄のため!

そう自分に言い聞かせれば半ばやけになって荒々しく服を脱ぎ、フリルのついた白いワンピースを頭から被って着替えた

そして小さな声で竜兄を呼び、試着室の扉を少して顔を覗かせる


「き、着替えたよ…でも女に見えな…わぁっ」


ばっと扉を開かれれば思いっきり抱き締められてしまった


「ありがとう。すっごく可愛いよ謙」


止めてと言いたいのに、え、とか、あ、とか訳の分からない言葉しか口から出ない
それほどパニクっていれば、店員さんと目が合い微笑まれた


「お似合いですよ。素敵な彼女さんですね」


違います!
…って叫びたかったけど、もう頭から湯気が出そうな程恥ずかしくて…泣いてしまうかと思った

いつの間にか靴までサンダルに変えられ、しかも会計まで済ましていたみたいで…本当にこのまま店内を見回るはめに
最初より周りの目が気にならなくなり、見回りやすいのは確かだったけど…男だってバレないかドキドキしっ放しで…
恥ずかしさを我慢する為に必死に洋服選びに集中し、いくつか選んで竜兄が買っていった


色んなお店をぐるぐると見回っていれば、また違った店員さんに声を掛けられる


「そこのカップルさんっ、今朝可愛いのが入ったんですよー是非見ていきませんか?」


明るく随分積極的な店員さんで、その片手に持ってる物は…し、下着で…


「彼女さんならこんなのとか似合いそうですよね?あ、でもこんなのも…」


見ちゃいけない物を見てる気分で、店員さんには分からないように竜兄の服を引っ張ったんだけど…笑顔を向けてくるだけで動く気配がない
そんな中、逆に俺が店員さんに服を引っ張られ、目を向ければ


「これなら1cupは大きく見せれますよ?」


と、耳打ちされてしまった
…もうまたパニクになってしまい、竜兄の影に隠れて服の裾を握り締めた
その手を竜兄が取ればしっかりと握り締められる


「それ、買おっか」


「え、えぇ…っ、こ、これも姉ちゃんに?」


店員さんには聞こえない小声で尋ねれば、「内緒」と返されてしまった
お、俺も何聞いてんだか…そんな事聞いちゃ駄目じゃんか…っ
益々恥ずかしさが募り、手を繋いだまま下着を買えばお店を出た
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