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目の前にあるのはケーキ
俺はそれをフォークで一口大に切り分けて口へと運ぶ
口に広がる甘さはとても上品で、甘酸っぱい苺とよく合う
出された紅茶は昨日と同じ物
これがまた相性抜群で、もう他の紅茶やケーキが食べれなくなりそうだ

ここは多分新の家
朝の10時に迎えに来て、車に乗せられたと思えば一件の家に連れて来られた
部屋に通され、新と二人っきり
特に会話もなく出されたケーキを頬張る

新はケーキを食べてはいないが、向かい側のソファーで優雅に紅茶を飲んでいた


「…どうだ?」


「おいひいよ」


「そっちじゃねーよ」


食べてる最中に尋ねてきたから随分間抜けな返答になってしまったが、何やら違うようだ

…主語くれないと分からないったら

そう念を送るように見つめていれば…舌打ちされたからすぐ逸らす
それから何やら指を差したので、それを辿れば俺の肩だった


「随分良くなったよ、ほら」


ケーキを食べ終えたのでフォークをテーブルに置けば、着ていたシャツの首元を指で引っ張り肩辺りまでズラして見せた

完全には消えてないものの、噛まれた傷は塞がった
どの歯形も結構薄くなり、是非またあの薬を借りたい

そう言ってみようと思い、シャツを引っ掛けていた指を離し、逸らしていた目を新に戻せば…目の前にいて、しかも見下されていてかなりびびった

眉間に皺を寄せた新は俺の肩の後ろ辺りのソファーに手を付き、身をかがめた


「…俺昨日言ったよな?分かってやってんのか?」


だから主語を…って言いたいけど怖いから言えない
必死に昨日の新の言葉を思い出すも、どれかが分からない
それが新に伝わったのか、また昨日のように「あー」とか「くそ」とか言いながら舌打ちをしてくる…それが非常に怖いのをもう内緒にせず新に訴えたい、…出来ないけど


「あのさ、良かったらあの薬どこで売ってるか教えてくれるか?」


…俺ったらこのタイミングで何言ってるんだろ
聞きたかったのた確かなんだけど、決して新の言った質問の答えではない

新が膨大な溜め息をつけば、俺の隣へと腰掛けた

…そして無言なまま俺の腰を掴み上げ、新の膝の上へと乗せられた
それに変な奇声を上げかけたが堪える
よく分からない常態のまま、後ろにいる新がきつく俺を抱き締めた
首筋辺りに息が掛かり、とても擽ったい


「薬はもう貸さねぇ、舐めてりゃ治るだろ」


「…っ、新っ」


「…声出したら犯すからな」


うなじ辺りを軽く舐められて、たまらず声を掛けたが見事に冷たくあしらわれた
…新の言葉に両手で口を覆って頷く
こんな事なら薬の話をしなければ良かった…あれ、でも新に話を振られたような気が…

そんな考えを余所に、さっき俺がしたように新が俺のシャツに指を掛ければ肩辺りまで露出される
歯形があると思われる場所に舌を這わせられ、その感覚に軽く背中を仰け反らせてしまう
たまに息も掛かり、多分嗅がれている
…それが死ぬほど恥ずかしくて目に涙が浮かんでくる

何もかもから逃げたくて前屈みになるが、腰に回っている腕のせいで逃げれないし上手くいかない

片側の肩が終われば、反対側の肩を同じように舐められ、気のせいか時折吸い付かれ…もう気が狂いそうになる


暫くすればようやく終わったようで、新の舌が離れていった
それに安心して口を抑えていた手を下へと降ろし、息を吸った


「斎希」


「…何?」


呼ばれたので振り返って新を見れば…頭を掴まれ無理矢理唇が重ねられる
まだ息苦しくて口を開けば新の舌が入ってきて…拒みたくても頭も体も動かせず、されるがまま


「新…苦し…んっ、は…っ」


「…これだけで我慢してんだから文句言うな」


酸欠で涙が滲む中新を見れば睨まれてしまい、抗議するのも止めればきつく目を閉じた


この後も何故か抱き締められたりキスされたり…それ以上の事はなかったんだけど
家から出してもらえなかったので泊まるはめになり、夜は同じベットで抱き枕にされた

…寝る前もキスされてしまい、……それだけでイきそうになったのは絶対内緒である
勿論、そのせいで中々寝付けなかったが、新は気のせいか幸せそうに眠っていた



end

 

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